魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 魔族の姿のまま召喚に応じたせいで、魔女にパニックを起こされ逃げられてしまった、という過去の事例も知っていた。

 契約締結に失敗すれば直ちに魔界に引き戻されることになる。

 だからカラスに化けたのちに、人間界への招待に応じた。

 そうして魔女の使い魔になった。

 侍従長は誇らしげにそう締めくくった。

「僕もいつか人間界に行けるかな?」

 まだ子どもだった魔王は、期待に胸を膨らませた。

「あー、どうでしょう……使い魔になる以外の方法が見つかればいいのですが……そもそも使い魔とは、人間の家来になるようなものなんです。決して魔族の頂点に立つ魔王様が結ぶような契約ではありません。そして、貴方様は何といっても魔王様のご子息であり、次期魔王となるお方ですから、」

 このとき、魔王は気持ちはどこまでも沈んでいった。

「たとえ魔女の声が聞こえたとしても、使い魔になるのは適切ではないのですよ」

 そう告げられたときには、自分の世界が完全に閉じられてしまったように感じた。
< 54 / 227 >

この作品をシェア

pagetop