魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(もし幸運にも魔女の声が聞こえるという奇跡が起こったなら、魔王が人間の使い魔になったって構わないじゃないか)

 契約してみて何か問題が生じたなら、そのときは二度と召喚に応じなければいいだけの話だ。

 使い魔になるのが単なる小動物だったら、そんな芸当はできないだろう。

 だが、魔族は違う。魔女ごときの召喚魔法など、鼻息で吹き飛ばせる。

 侍従長だってやろうと思えば、それができるはずだ。

 にも拘らずそれをしないのは、人間界で魔女の家来として働くのが楽しいからに他ならない。

(僕にも聞こえればいいのに)

 目を閉じて願った。

 この無限の檻から出てみたい。

 空を見上げるという行為がどれほど爽快なのか知りたい。

(僕にも聞こえてくれよ)

 強く念じていれば何か聞こえてくるような気がしてきた。

(いや、そんなはずはないか……)

 魔王はため息を吐いた。

(そんなはずが……)
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