魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
(国王陛下……ってどこにいるんでしょう?)
魔力が制限されている状態では、知らない人間のところへは行きようがない。
「サンディのこと、覚えてる?」
その名前を聞くのは本当に久し振りだった。
それでも思い出せた。領主の息子だ。
心根は優しかった。それは認める。
けれど、それゆえ周りに強くも出られない男だった。
あれが国王になっていたとは驚きだ。
(今さらあの男に何の用があるというんですか……)
ラーシュは訝しんだが、今や国王なのだと思い直した。
呼ばれてお使いを頼まれるだけの身では繁忙の詳細までは分からないが、どうやら王都で配るための薬を王命で作っているらしかった。
それなら、この手紙を届けることがソフィーたちの状況を好転させる手助けになるかもしれない。
(普段であれば、お使いの途中に少しだけ寄り道して、人間界を見て回るところですが……)