魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 使えるだけの魔法を使って速力を上げていたお陰で、しばらく飛んでいるうちに王都が見えてきた。

 疫病のせいなのか、初めて見る王都に活気はなかった。

(これならノールブルク領の中央街のほうが、規模はずいぶんと劣るものの、よほど栄えているではないですか)

 その王都の中心にある優美な王宮は、もの悲しさすら感じさせる。

 ラーシュは、国王が中庭に出ている隙を見計らって手紙を突き出した。

 国王は目を見開き、そして固まってしまった。

「あ……まさか……」

(久しぶりの再会とはいえ、いささか失礼じゃありませんか? 私のことを覚えていないわけではないですよね?)

 それどころか、せっかく手紙を届けにきてやったにも拘らず、護衛が槍で突いてこようとした。

 ちょっとした雷を落としてやろうかとも思ったけれど、国王が慌てて制止したので、ラーシュのほうも思い止まってやった。

 国王はようやく手紙を受け取った。
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