魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「……そうか。で、人間界はどうだった?」
「手紙の配達をしただけですよ」
「配達……それはまた色々な物を見られて楽しかったんだろうな」
(やはりおかしい……)
これがいつもなら、置いていかれたことを拗ねながらも、話は聞きたくてウズウズするはずだ。
それが今はどうだ。
興味はないが一応聞いてみた、といった様子だ。
魔王は演技ができるような器用さを持ち合わせてはいない。
「国王の住む王宮という場所まで行ったんですが……」
「王宮!? それで誰と会った?」
魔王が目を見開いた。
(おおっ、反応しましたね! ここはひとつ、自慢話にならない程度に話をしなくては……)
「もちろん国王ですよ」
「国王……国王の家族は?」
「見かけませんでした。ずいぶんと広かったですし……あっ、魔王城に比べれば狭いんですよ」
魔王は『当たり前だろう』と鼻白んだ。
(せっかく魔王様が興味を示してくれたのに、機嫌を取るのに失敗してしまったようですね……)