魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「だけど、魔族全員が僕にとっては家族みたいなもんなんだよ。姉や妹と結婚なんてできないだろ」

「それでも、結婚してもいいと思う者がひとりくらいはいませんか?」

「いないよ」

「本当に? 誰でもいいとしたら?」

「…………」

 侍従長は驚きまくった。

(これは、誰かを思い浮かべてるに違いない!)

「誰なんです?」

「だ、誰とは?」

「今頭に浮かんだのは」

「誰でもないよ!」

 ぷいっと横を向いた魔王は、口を結んでしかめっ面をした。

 動揺を隠すためであろうことは侍従長にはわかっていた。

(ここで焦って聞き出そうとするのは悪手でしょうね)

 しかし侍従長が何もしないと、何も進展しない可能性が極めて高いと思われた。

 そのくらい魔王は恋愛と無縁なのだ。
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