魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
やはりパーティーは開こうと決めた。それも大規模に!
(広く招待しなくては。それで魔王様をよくよく観察して、お相手を突き止めて……)
こうしてはいられなかった。さっそく準備を始めなければならない……
「おおっ?」
こんなときだというのに、聞こえてきてしまった。
しかも無視のできないほど緊迫した声で『ラーシュ!』と。
侍従長は遠慮がちに主君の顔色を窺った。
「その……さっき戻ってきたばかりで申し訳ないですが、もう1度人間界に行ってまいります。どうも緊急なようですので……」
依然として覇気のない魔王は『ああ、うん、行ってこれば?』と答えた。
(有り難いといえば有り難いですが、本当にどうしてしまったのか……)
侍従長は魔王に向かって一礼した。
顔を上げたときにはカラスの姿になっていた。