魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
(これはサクラではないと信じていいだろうか……)
侍従長の待ちきれない様子に、魔王の胸にも期待が芽生え始めた。
(久し振りの願い事は何だろう……たとえ人間同士の揉め事に関することであっても、今度はもう少し慎重に返事をしないとな……)
魔法で封筒の上端を焼き切り、中の手紙を取り出した。
魔王は素早くその内容を読んだ。
読んだといっても、人間の文字が読めるわけではない。ここでも魔法を使って、そこに書かれている内容を把握したのだ。
「これはいい」
自然と笑みがこぼれた。
「何と書いてあったのですか?」
「マルスドッテル王国という国で流行している疫病を治す薬がほしいそうだ」
侍従長は『ああ、なるほど』と深く頷いた。
侍従長は何か知っているのかもしれない。