魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
(それにしても、すこぶる人道的な願いじゃないか。さくっと叶えれば、先の悪評判だって帳消しにできるかもしれない)
「これは叶えやすいな」
「そうですね。私からもぜひともお願いします」
「なぜ侍従長が?」
魔王は眉をひそめた。
侍従長はちょくちょく人間界に出かけているのだから、人間の事情に通じていても当然だ。
それでも魔王は、自分宛ての手紙に書かれている内容以上のことを侍従長が知っている気がして悔しい。
「その病のせいで、私の主人である魔女がそれはそれは苦労させられているんですよ」
(何だ、そういうことか。だったら納得だ)
これまで自分は係れなかったラーシュと魔女の繋がりに、初めて加われるのだ。
魔王はすっかり機嫌を取り戻していた。
「なら決まりだな」
「それで、対価はどうされるのですか?」
「対価……対価な……」