魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
魔王の頭の中に、候補がひとつ浮かんだ。
しかし、躊躇われた。
(これは要求してもいいものなんだろうか……)
とはいえ、ほかに要求したい対価など今の魔王には思いつかなかった。
しかも、『要求して問題はないだろうか?』と自問自答すればするほど、それを望みたくなってくるのが性というもの……
(人生を左右するような重要なことを、こんな思いつきで要求なんてな……でも、今までの対価だって全部思いつきだったじゃないか……)
侍従長は、真剣に悩んでいる魔王の顔を覗き込んできた。
「どうか前回のような下手を打ちませんように」
「そうだよな……だけど……」
魔王はふと気がついてしまった。
(下手を打ったからどうだっていうんだ。人間からのコンタクトが今後一切なくなったって構うもんか。この望みが叶う可能性に賭ける!)