魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「うん、これでいい」
国王がこの手紙を開いた瞬間、今魔王の呟いた内容が直接頭に届く。
「ラーシュ、」
「ご自身の都合がいいときだけそう呼ぶんですね」
侍従長は不満を隠そうともしていなかった。
「何が不満なんだ? 王妃を迎えてほしかったんじゃないのか?」
「だからって、人間を王妃にするなんて!」
「でも、これでお前の主人の魔女だって楽になるんだ。もっとよろこんでくれたっていいだろう?」
「それはそうですが……」
「僕はもう決めたから! ラーシュの姿になって、返事を人間界に持っていってくれ」
普段気安い口をきいているとはいえ、侍従長は所詮、魔王の臣下にすぎないのだ。
侍従長に反論を許すつもりはなかった。
「かしこまりました」
侍従長はそう言うと、不承不承カラスになった。
「よろしく」
魔王はくちばしの割れ目に手紙を差し込んだ。