魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「そうだ、国王に手紙を渡す前に、国王の住まいをよく見てきてよ。戻ってきたら、それを参考にして王妃の部屋を整えてほしいんだ」
お使いの途中であまり長いことほっつき回っていると、役立たずと判断され、使い魔の契約を切られてしまう可能性が出てくるかもしれない。
しかし、よほど魔女が狭量でもない限り、そのぐらいの寄り道なら充分に許容範囲内だろう。
ラーシュは手紙をくわえたまま、喉を『クウッ』と鳴らした。『はい』と答えたはずだ。そうに決まっている。
ラーシュが完全にいなくなったことを確認すると、魔王は両手で顔を覆い、足をじたばたさせた。
(僕の王妃だって! うわー、どうしよう!?)
それからひとしきりハシャいだのだった。