魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 鼻から息を吐いたとき、キーキー声が止まった。

 『うん?』と部屋の様子を調べようとして、ラーシュと少女の目線がかち合った。

「あのカラスは何? 手紙をくわえてるわ! まさか伝書カラス?」

 少女がバルコニーに出ようと駆け寄ってきた。

 伝書カラスに間違いはないが、配達先が違う。

 ラーシュは慌てて飛び立った。

(部屋の調査はもう充分でしょう。ついでに王妃候補と思しき少女も確認できたことですし、上出来です。正直なところ、知りたくなかった気はしますが、心の準備ができたと思えばいいですね……)

 自分を慰めつつ、国王の元へと向かった。

 国王はバルコニーから執務室に引き上げていた。

 窓に背を向け書類に判を押していたが、その最中である今も、魔王から返事が来るのを今か今かと待っていたらしい。

 ラーシュが窓ガラスをくちばしの先でほんの少し叩いただけで国王は振り返り、勢いよく椅子から立ち上がった。

 そしてすぐに窓を開けた。
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