魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 それにあの王女だって、否応なしに魔界に嫁がされるのだ。

 疫病の状況を鑑みると、待ったなしだ。心の準備ができるのを待ってやることもできないだろう。

(ならば、侍従長として温かく迎えなくては……)

 何より魔王が王女と会えば、気が変わる可能性だって無きにしも非ずではないか。

 もし王女が魔王城で捨て置かれるような状況にでもなったときには、どうにか人間界に戻してやる手立てでも考えよう。

 侍従長としての方針は固まった。


 それからは粛々と王妃を迎える準備を整えた。

 あとは王妃を待つのみ……

「花嫁だ!」

 魔王様が天井を見上げた。

「今からここに呼ぶぞ、いいな?」

 侍従長は努めて恭しく頷いた。

 魔王が呪文を唱えると、花嫁衣裳を着た少女が現れた。

 その少女を見て、侍従長は心の中で叫んだ。

(何で!? 貴方は第一王女じゃないでしょうが!)

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