魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 イーダは格子をつかんで立ち上がり、檻車から出た。

 そこは王宮の裏側だろうと思われた。

 日陰になっていて空気が冷たい。

 ひっそりとしている入口から、王宮の中へ入らされた。

 イーダは兵たちに囲まれて廊下を進んだ。

 そうしてある部屋まで連れてこられた。

 その部屋にはメイドらしき女たちがいた。

「これが例の魔女です。あとはよろしく頼みます」

 『例の』とは、“王女の身代わりの”という意味だろう。

 男たちはメイドにイーダを引き渡すと、今来た廊下を戻っていた。

 最も年齢の高そうなメイドが、品定めをするようにイーダを見た。

「こちらにお座りください」

 威張り散らしてイーダをここまで連れてきた男とは違って口調こそ丁寧だったけれど、侮蔑する視線はまるで同じだ。

 乱暴に髪を引っ張られ、髪をひとつにくくられた。

「痛っ!」

 しかしメイドたちは誰も何も言わなかった。
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