魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「化粧をしていますので、泣かれては困ります」
(このメイドの家族や知り合いに、魔女が作った斑紋死病の薬で助かった人はいないの?)
イーダは喚き散らしたい気分になった。
けれど、イーダは支度を済ませて魔王の元へ行かなければならない。
そうしなければ、集落に火矢が放たれてしまう。
髪を切られようとも、このメイドたちに第一王女に似せてもらうしかないのだ。
イーダは風魔法を使って涙を乾かした。
メイドたちが一瞬ひるんだ。
「魔王に第一王女殿下ではないと、せめてひと目でバレることのないようにお願いしますね」
「え、ええ……」
それ以後はメイドたちの態度が丁寧になったので、少しだけ溜飲が下がった。
「お着替えをお願いいたします」
立ち上がったイーダは、手伝われながら婚礼衣装に着替えた。
最後にプラチナブロンドのウィッグをつけられたら、魔王の花嫁の出来上がりだった。