魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「それでもどうにかして、魔王に斑紋死病の特効薬を作らせてほしい。これは魔女殿にしか頼めないことなのだ」
(ノールブルク領出身だからって、逆に魔女の力を過信しすぎてない?)
魔女なんて、多少魔法が使えるというだけなのだ。
魔王がどれほどの存在なのか知るよしもない。それでも、イーダより遥かに強大な力をもっているであろうことは容易に想像できる。
斑紋死病の特効薬も作れるのだから。
そんな魔王をダマせる自信は、イーダにはこれっぽっちもない。それは、いくらイーダを花嫁に仕立て上げたメイドたちも驚くほどの出来栄えだとしてもだ。
けれど、国王陛下とだってこんなふうにきちんと話ができるのだ。
(バレてしまった場合でも、魔王にも事情を話せば許してもらえるかもしれない……)
一縷の望みに賭けてみたい気がしてくる。