魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「やれるだけはやってみます。ただ……失敗したからといって、魔女の集落を焼き払うことだけはしないでいただきたいです」
国王陛下は慌てた。
「そんな脅しをしたとは! もちろん感謝こそすれ、罰を与えることなど考えていない。第一そのときには引き続き薬を作ってもらわなければならないのに、焼き払うなどとあり得るはずがない」
(そっか。失敗したって、今までと同じ薬を作ればいいだけの話なんだ。それだけ約束してもらえるなら……)
イーダは国王陛下を見据えた。
(考えてもみれば、指定されたのと違う対価を用意したんだから、特効薬を作ってもらえなくたって当然じゃない。しかもそれは私のせいじゃない。特効薬を作ってもらえないときには、魔王に平謝りでも何でもしてこっちの世界に帰してもらうだけはしよう。そうして私はみんなとまた薬を作る!)
「それなら私なりに精いっぱいのことをしてきます」
「よろしく頼む」
「それで、私はどうやって魔王の元まで行けば?」
「準備ができたら『我を呼べ』と手紙には書いてあったが?」
「『呼べ』?」
(何て雑な指示……どうやったら魔王なんて呼べるの?)