魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「あ、あの……」

 この情けない気持ちを悟られないように、精いっぱい軽く聞いた。

「うん、何かな?」

「婚姻の儀式……って何をするんでしょうか?」

「ふたりだけで名前を教え合うんだけど?」

 王女が大きくため息を吐いた。安堵のほうのため息だ。

「名前を……そう、でしたか……」

「人間界では違うの?」

 王女は手を胸に当てて呼吸を整えながら、『はい』と頷いた。

「へえ。人間は、婚姻の儀式でどんなことを?」

「神様の前で婚姻の誓いを立てて、それからキスを」

(キ……!)

 魔王の顔が真っ赤に染まった。

「そ、そういうのは追々でいいんじゃないかな? あっ、いや、決して嫌とかじゃないんだよ! だけど、ほ、ほら、僕らの場合はいきなり結婚なわけだしっ」

「そう、そうですよね。うわー、よかったー」
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