魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
(そこまでほっとされてしまうと複雑な気がするんだけど……でも、強引に花嫁にしてしまったんだし、焦らずいこう。というか、そんな急展開、こっちの身がもたないよ!)
「あっ、もちろん名前は大事ですけどね。そっか、夫婦になるってことは家族になるわけだから、名前を教え合うんだ……」
王女はぶつぶつ呟きながら、妙に感心している。
「準備も特に要らないし、時間もそんなにかからないよ」
「名前を言うだけですもんね」
「そうそう! だからぱぱっと済ませてしまおうよ」
しかし、王女はまたぶつぶつと独りごち始めた。
「でも……名前を教えるってことは、そこで何らかの縛りが生じる……?」
(ギクッ!)
そして実のところ、魔法による婚姻契約は容易に締結できるが、強固で破棄はほぼ不可能に近い。
それでも魔王は躊躇うつもりがないどころか、一刻も早く結んでしまいたかった。
「完全に防音仕様になってる儀式の間っていう部屋があるから、そこに移動しよう。こっちだよ」