魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

3.3

 イーダは儀式の間から疾風のごとく出てくるなり、呪文を唱え箒を手にした。

(よかった。魔界でも箒は使えるんだ)

 大急ぎで飛び乗り、急発進させた。

「王女、待てー!」

 当然のことながら、魔王は怒り心頭の様子だ。

(どうしよう! ああ、やっぱりあのとき王女殿下の名前じゃなくて、自分の名前を名乗って、『王女じゃないんです』って白状しておくべきだった? ううん、やっぱり同じように怒らせたと思う!)

 どのタイミングで切り出せば正解だったのか、さっぱり分からない。

「わーっとっと! 危なーい!」

 さっきからどうも速度が出すぎている。

 今も壁にぶつかる寸前に、何とか曲がりきれただけだ。

「こらー! 魔王城の中を飛び回るなー!」

(そんなこと言われてもっ)

 この箒の速さに、魔王がどうやってついてきているのか? という疑問が頭をもたげたが、あいにく振り返って確認をする余裕も度胸も持ち合わせていなかった。
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