無一文男と相乗りしただけなのに、御曹司の執着愛が止まらない
5話 60本・死ぬまで変わりません
○4日後・コンビニ店内・レジ(昼)
結実(剣滝さんは交際中の彼女として、私を社員の皆さんに紹介した)
結実、レジカウンターの中でぼーっと立ったまま、4日前のことを思い出す。
結実(私は交際しているつもりはなかったけれど、彼に惹かれ始めていることは確か。自分からは、剣滝さんの彼女を名乗るつもりはないけれど……)
結実、レジカウンターの外にいる女性客を見つめる。
女性客、4日前に結実を批判してきた女性社員1と同一人物。
女性社員1「ねぇ。あなた。剣滝さんと、交際しているのよね?」
結実、無言で思考。
結実(そう聞かれたら、肯定も否定もできなくて。曖昧な関係を続けることは、あまり良くないと反省した)
後方にレジ待ちの客がいることに気づく結実。
申し訳無さそうに告げる。
結実「申し訳ございません……他の方の、ご迷惑となりますので……」
女性社員1「あんたが剣滝さんの彼女なんて、認めないんだから!」
女性社員1、苛立った様子で店外へ。
結実、レジ待ちしていた客の会計を行う。
結実(変な人に、目をつけられちゃったな……)
レジ打ちを終えて客を見送った結実、頭を下げながら思考。
結実(はっきりさせないと、マズイよね……)
ぼんやり考えていると、結実の前に結星がやってくる。
結星「なぁ。あの女。結実の何?」
結星、訝しげ。
事情を説明する結実、肩の力を抜く。
結実「剣滝さんの、同僚……? 彼のことが、好きみたい」
結星「ふーん。嫉妬か」
結星、納得した様子。
結星「変なのに、喧嘩売られたな」
結星、肩を竦める。
労りの言葉を投げかけられた結実、苦笑い。
そこへいつもの時間通りに、康がやってくる。
結実「いらっしゃいませ」
結星「らっしゃいせー」
結実、やってきたのが康だと気づいて優しく微笑みながら挨拶。
結星、やる気がない。
態度悪く挨拶。
結実「結星」
結星「いいだろ、別に」
結実、苦言を呈する。
結星、ふてくされた様子をみせたあと、康を睨みつける。
結星「なぁ。あんたって、女性関係激しいのか?」
康「なんの話だ」
状況の飲み込めない康、結星から睨みつけられた視線を受けて立つ。
結星「さっきさ。結実があんたの彼女だと認めないって、変な女が喧嘩売ってきてたんだけど」
結実「結星!」
結星「ほら、レジ。変わってやるから。品出しよろしく。ちゃんと、話し合えよ」
結星、レジカウンターの中に入ってくる。
追いやられ送り出された結実、渋々結星の代わりに、品出しの準備を始める。
結実「剣滝さん。こっちで、いいですか」
康「ああ」
結実、康を連れて雑誌コーナーへ移動。
○コンビニ店内・雑誌コーナー(昼)
結実(私は雑誌の品出しをしながら、剣滝さんと話し合うことになった)
結実、雑誌を並べ始める。
康、その様子を隣で眺めながら、重い口を開く。
康「俺が愛しているのは、結実だけだ。他の女を好きになるなど、ありえない。安心してくれ」
その言葉を耳にした結実、思考する。
結実(心配は、していないけれど……)
結実、雑誌を品出ししながら、窓ガラスに目を向ける。
真剣な眼差しをした康が映っていることに気づく。
結実(真正面から、彼を見つめる勇気はない……)
結実、ぼんやりと窓ガラスに映る康を見つめる。
自分を直接視界に入れない結実へ、ムッとする康。
不満を口にする。
康「俺を好きだと思いを告げてくる相手は、俺の肩書にしか興味がない。御曹司の肩書を隠していた俺を、普通の女は、冷たくあしらうものだ」
初めて出会った日のことを、脳裏で思い描く康。
その表情は暗い。
康「社長の息子でなければ、価値を見出されることはない。俺は、その程度の男だ」
結実「そんなこと……」
康「結実は優しいな」
康、優しく微笑む。
結実(剣滝さんは人柄や容姿に、自信がないのかしら……)
結実、戸惑いながら康の様子を覗う。
結実「剣滝さんは、整った容姿をお持ちで……。時折私が想像もつかないことをしますけど、とても魅力的な男性だと思いますよ」
康「ありがとう。結実からそう言ってもらえて、とても嬉しい」
満足そうな康の姿を見た結実、嬉しくなって微笑む。
康「あの女のことは、心配いらない。俺が、始末しておくから」
和やかなムードが流れる。
優しく微笑む康の口からとんでもない言葉が飛び出し、面食らう結実。
結実(しま、つ……?)
頭の中で言葉を繰り返し、疑問符を浮かべる結実。
康はこの話はこれで終わりだと伝えるように、話題を変える。
康「他の女に、取られてしまうのではないかと。少しだけでもいい。心配してくれたら、嬉しいのだが……」
微笑むのをやめた康。
複雑な思いを抱きながら結実を見つめる。
結実(嫉妬してほしいって、ことかしら……)
雑誌の品出しを終えた結実、康を面と向かって見つめるため、右側を向く。
見つめ合う二人。
長い沈黙の後、結実が告げる。
結実「……そうですね……。彼女の方が、美しい容姿をしていらっしゃったので……」
康「そんなことはない」
結実、康の言葉に首を振る。
結実「どうして私なんだろう、とは……思っています」
康「それは……」
結実「なので……。いつも、ありがとう、ございます。まっすぐな愛を、私に注いでくださって」
何かを言いかけた康を遮るように伝えた結実。
握りこぶしを作ると、勇気を出して提案。
結実「今まで、曖昧な関係を続けてしまい、申し訳ありませんでした」
康「謝罪の必要はない。俺が……」
結実「薔薇の花を。貰えますか」
結実、康が左手に持っていた4本の赤薔薇を見つめる。
康、その場に膝をつくと、結実を見上げて差し出す。
康「見た目が美しかったとしても、心が醜ければ意味がない。俺の結実に対する愛は、命を落とす瞬間まで変化することはないだろう。愛している」
愛の告白を受けた結実、目を見開く。
結実(信じても、いいのかしら)
亮に裏切られた経験のある結実は、逡巡する。
結実(信じてみたい。彼の愛を。剣滝さんは……あの人とは違う。私に対して、まっすぐな愛を注いでくれる)
亮と康を比較した結実、差し出された赤薔薇と康の瞳を見つめる。
結実(この人となら、私は……)
差し出された赤薔薇を手に取る結実、告白の返事をする。
結実「私と結婚を前提に、お付き合いしてください」
目を見開く康。
戸惑いを隠せない様子。
康「いいのか」
康、真剣な眼差しで問いかける。
結実(初めて告白されたとき……嫌がる素振りを見せてしまったから……。信じてもらえていないみたいだわ……)
結実、少しだけムッと頬を膨らませながら、視線を逸らす。
結実「嫌なら、いいです」
康「まさか」
胸の前で4本の赤薔薇を手にした結実。
康は視線を合わせる為に、彼女の両頬を挟み角度を変える。
康「今すぐ、結婚したいくらい……結実を愛しているのに……」
お互い熱っぽい視線をしながら、見つめ合う二人。
康「嫌なわけが、ないだろう」
康、結実と顔を近づける。
結実(思いを通じ合わせた私達は、唇を触れ合わせた)
結実、目を閉じ康の唇を受け入れる。
結実(甘くて、切なくて。とろけてしまいそうな、甘い口づけをーー)
結実、口づけの感想を思い浮かべる。
結実(何度も経験したいと思う、なんて。私は、自分が思っている以上に、彼へ好意を抱いているらしい)
唇を離した康、結実に懇願する。
康「結実。俺のことも、名前で呼んでくれないか」
顔を赤くした結実、視線を逸らす。
結実「それは、また今度にしてください」
康、頷く。
結実(そうして、私達はーー正式に、彼氏彼女を名乗ることになった)
結実(剣滝さんは交際中の彼女として、私を社員の皆さんに紹介した)
結実、レジカウンターの中でぼーっと立ったまま、4日前のことを思い出す。
結実(私は交際しているつもりはなかったけれど、彼に惹かれ始めていることは確か。自分からは、剣滝さんの彼女を名乗るつもりはないけれど……)
結実、レジカウンターの外にいる女性客を見つめる。
女性客、4日前に結実を批判してきた女性社員1と同一人物。
女性社員1「ねぇ。あなた。剣滝さんと、交際しているのよね?」
結実、無言で思考。
結実(そう聞かれたら、肯定も否定もできなくて。曖昧な関係を続けることは、あまり良くないと反省した)
後方にレジ待ちの客がいることに気づく結実。
申し訳無さそうに告げる。
結実「申し訳ございません……他の方の、ご迷惑となりますので……」
女性社員1「あんたが剣滝さんの彼女なんて、認めないんだから!」
女性社員1、苛立った様子で店外へ。
結実、レジ待ちしていた客の会計を行う。
結実(変な人に、目をつけられちゃったな……)
レジ打ちを終えて客を見送った結実、頭を下げながら思考。
結実(はっきりさせないと、マズイよね……)
ぼんやり考えていると、結実の前に結星がやってくる。
結星「なぁ。あの女。結実の何?」
結星、訝しげ。
事情を説明する結実、肩の力を抜く。
結実「剣滝さんの、同僚……? 彼のことが、好きみたい」
結星「ふーん。嫉妬か」
結星、納得した様子。
結星「変なのに、喧嘩売られたな」
結星、肩を竦める。
労りの言葉を投げかけられた結実、苦笑い。
そこへいつもの時間通りに、康がやってくる。
結実「いらっしゃいませ」
結星「らっしゃいせー」
結実、やってきたのが康だと気づいて優しく微笑みながら挨拶。
結星、やる気がない。
態度悪く挨拶。
結実「結星」
結星「いいだろ、別に」
結実、苦言を呈する。
結星、ふてくされた様子をみせたあと、康を睨みつける。
結星「なぁ。あんたって、女性関係激しいのか?」
康「なんの話だ」
状況の飲み込めない康、結星から睨みつけられた視線を受けて立つ。
結星「さっきさ。結実があんたの彼女だと認めないって、変な女が喧嘩売ってきてたんだけど」
結実「結星!」
結星「ほら、レジ。変わってやるから。品出しよろしく。ちゃんと、話し合えよ」
結星、レジカウンターの中に入ってくる。
追いやられ送り出された結実、渋々結星の代わりに、品出しの準備を始める。
結実「剣滝さん。こっちで、いいですか」
康「ああ」
結実、康を連れて雑誌コーナーへ移動。
○コンビニ店内・雑誌コーナー(昼)
結実(私は雑誌の品出しをしながら、剣滝さんと話し合うことになった)
結実、雑誌を並べ始める。
康、その様子を隣で眺めながら、重い口を開く。
康「俺が愛しているのは、結実だけだ。他の女を好きになるなど、ありえない。安心してくれ」
その言葉を耳にした結実、思考する。
結実(心配は、していないけれど……)
結実、雑誌を品出ししながら、窓ガラスに目を向ける。
真剣な眼差しをした康が映っていることに気づく。
結実(真正面から、彼を見つめる勇気はない……)
結実、ぼんやりと窓ガラスに映る康を見つめる。
自分を直接視界に入れない結実へ、ムッとする康。
不満を口にする。
康「俺を好きだと思いを告げてくる相手は、俺の肩書にしか興味がない。御曹司の肩書を隠していた俺を、普通の女は、冷たくあしらうものだ」
初めて出会った日のことを、脳裏で思い描く康。
その表情は暗い。
康「社長の息子でなければ、価値を見出されることはない。俺は、その程度の男だ」
結実「そんなこと……」
康「結実は優しいな」
康、優しく微笑む。
結実(剣滝さんは人柄や容姿に、自信がないのかしら……)
結実、戸惑いながら康の様子を覗う。
結実「剣滝さんは、整った容姿をお持ちで……。時折私が想像もつかないことをしますけど、とても魅力的な男性だと思いますよ」
康「ありがとう。結実からそう言ってもらえて、とても嬉しい」
満足そうな康の姿を見た結実、嬉しくなって微笑む。
康「あの女のことは、心配いらない。俺が、始末しておくから」
和やかなムードが流れる。
優しく微笑む康の口からとんでもない言葉が飛び出し、面食らう結実。
結実(しま、つ……?)
頭の中で言葉を繰り返し、疑問符を浮かべる結実。
康はこの話はこれで終わりだと伝えるように、話題を変える。
康「他の女に、取られてしまうのではないかと。少しだけでもいい。心配してくれたら、嬉しいのだが……」
微笑むのをやめた康。
複雑な思いを抱きながら結実を見つめる。
結実(嫉妬してほしいって、ことかしら……)
雑誌の品出しを終えた結実、康を面と向かって見つめるため、右側を向く。
見つめ合う二人。
長い沈黙の後、結実が告げる。
結実「……そうですね……。彼女の方が、美しい容姿をしていらっしゃったので……」
康「そんなことはない」
結実、康の言葉に首を振る。
結実「どうして私なんだろう、とは……思っています」
康「それは……」
結実「なので……。いつも、ありがとう、ございます。まっすぐな愛を、私に注いでくださって」
何かを言いかけた康を遮るように伝えた結実。
握りこぶしを作ると、勇気を出して提案。
結実「今まで、曖昧な関係を続けてしまい、申し訳ありませんでした」
康「謝罪の必要はない。俺が……」
結実「薔薇の花を。貰えますか」
結実、康が左手に持っていた4本の赤薔薇を見つめる。
康、その場に膝をつくと、結実を見上げて差し出す。
康「見た目が美しかったとしても、心が醜ければ意味がない。俺の結実に対する愛は、命を落とす瞬間まで変化することはないだろう。愛している」
愛の告白を受けた結実、目を見開く。
結実(信じても、いいのかしら)
亮に裏切られた経験のある結実は、逡巡する。
結実(信じてみたい。彼の愛を。剣滝さんは……あの人とは違う。私に対して、まっすぐな愛を注いでくれる)
亮と康を比較した結実、差し出された赤薔薇と康の瞳を見つめる。
結実(この人となら、私は……)
差し出された赤薔薇を手に取る結実、告白の返事をする。
結実「私と結婚を前提に、お付き合いしてください」
目を見開く康。
戸惑いを隠せない様子。
康「いいのか」
康、真剣な眼差しで問いかける。
結実(初めて告白されたとき……嫌がる素振りを見せてしまったから……。信じてもらえていないみたいだわ……)
結実、少しだけムッと頬を膨らませながら、視線を逸らす。
結実「嫌なら、いいです」
康「まさか」
胸の前で4本の赤薔薇を手にした結実。
康は視線を合わせる為に、彼女の両頬を挟み角度を変える。
康「今すぐ、結婚したいくらい……結実を愛しているのに……」
お互い熱っぽい視線をしながら、見つめ合う二人。
康「嫌なわけが、ないだろう」
康、結実と顔を近づける。
結実(思いを通じ合わせた私達は、唇を触れ合わせた)
結実、目を閉じ康の唇を受け入れる。
結実(甘くて、切なくて。とろけてしまいそうな、甘い口づけをーー)
結実、口づけの感想を思い浮かべる。
結実(何度も経験したいと思う、なんて。私は、自分が思っている以上に、彼へ好意を抱いているらしい)
唇を離した康、結実に懇願する。
康「結実。俺のことも、名前で呼んでくれないか」
顔を赤くした結実、視線を逸らす。
結実「それは、また今度にしてください」
康、頷く。
結実(そうして、私達はーー正式に、彼氏彼女を名乗ることになった)