好きって言わなくても分かるでしょ

第1話 高校の友達


真新しい制服に袖を通してから
1か月は経とうとしていた。

高校1年生の栗原梨花は、
まだ教室の雰囲気に慣れず、
女子のグループに入れずにいた。

同じ高校に通う水島朔斗は、幼稚園からずっと
付き合いがあるお家がお隣同士の幼馴染だ。


中学では部活や受験勉強のための塾に通うので忙しくしてて、接点は朝会って挨拶くらいでクラスは別々になり、話すことは少なかった。

高校になって、近辺では偏差値が高い高校を選んだ。
梨花の成績は中の下に近いところで、
ギリギリの偏差値レベルだった。
朔斗は、順位が2桁に入るくらいの高成績、
その上、高身長、イケメン顔。


欠点とすれば、会話が少ない。


余暇が少ない。要点しか言わない。


無口になることもしばしば。
余計なことは話したくないんだろうか。


幼い頃はいろんなことをものすごく喋る
マシンガントークの朔斗だった。


これまでの人生で何かがあったんだろうと
梨花は推測する。


かっこいいのにもったいないと感じる。


そして、なぜか一緒のクラス。
梨花が1番後ろの真ん中なら、
朔斗は、窓際の2つ離れたところに座っていた。


頬杖をつきながら、窓の外を眺める姿をチラチラと
覗くのが日課になっていた。


ゲームをしてるように朔斗に気づかれないように
視線を逸らすのが楽しくなってくる。


バレてないはずだ。


授業中、廊下側にぐるりんと首を動かすと、
朔斗の表情は見えないが、鬼のように怒っている
朔斗がいた。見るんじゃないと言いたげそうだ。


今朝は、電車の中で話しかけてきたのに、
いつも、学校では空気のように廊下ですれ違っても知らない人のような態度。


私は朔斗の幼馴染ではなかったのかと疑う。


「梨花ちゃん、お昼ご飯一緒食べない?」

 このクラスになって初めて話しかけられた。

 すでに女子のグループは固まってできていたはずなのに、気さくに話しかけてくれたのは、右隣の席に座る 浅野恵麻(あさのえま)だった。


お弁当を広げようとした瞬間だった梨花は、驚いて固まった。嬉しかった。


「あ、うん。もちろん。
 ぜひ。一緒に混ざってもいいですか?」


「そんなクラスメイトなんだから、
 敬語使わなくても大丈夫だよ、
 ねえ、美貴ちゃん。」

梨花の2つ前の席に座る 菅原美貴(すがはらみき)
がニコッと笑って近づいた。近くにあった他の人の机を借りて、くるりと後ろに返した。

「そうそう。
 梨花ちゃん、ずっとお弁当1人だったみたいだから
 席替えしてやっとお近づきになれるかなと
 声かけるタイミングはかってたよ。」

「そ、そうだったんだ。
 ありがとう。
 声かけてくれて嬉しい。
 実をいうと、グループが固まってたから
 どうすればいいか迷ってたの。」

「まあ、確かに。
 グループの中に入るのって勇気いるよね。」

 美貴は頷いて言った。

「まあまあ、私たちのチームなら
 安心でしょう。
 ついで、ライン交換もしちゃおうよ。」

 恵麻がスマホをポケットから取り出して、
 梨花に差し出す。

 友達が増えてご機嫌になる梨花だった。


その様子を遠くから見守る朔斗は、
口角を上げて静かに笑っていた。





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