好きって言わなくても分かるでしょ
第2話 尾行
放課後の通学路。
イヤホンを耳につけて、
いつも通りに高校から最寄りの駅に
歩いて向かう。
外は少し薄暗くなっていた。
高校生は危ないから1人でなるべく帰らないようにと
学校では言われているが、帰る方向が違うのならば、
結局1人で帰らなくてはいけない。
途中まで一緒に帰ってくれる中学の同級生もいたが、
親が迎えに来るからと別々になる。
梨花は1人寂しくゆっくりと
石畳の歩道をまっすぐ歩いていた。
数十メートル先に同校生徒のカップルが
歩いていたりするが、後ろは誰もいない。
バックを持ち直した。
交差点近くの曲がり角に進もうとすると、
誰もいなかったはずの後ろからカツカツと
靴音が響いた。
まさか尾行されているのだろうか。
こんな自分を追いかける人なんて誰もいないだろうと
たかをくくっていると、
梨花の予感は的中、
中肉中背の帽子とマスクをつけた男に
裏路地にぐぐっと体をひっぱられ、
口元はハンカチで塞がれた。
誘拐されているのか自分と、必死で逃げようとしたが、力が強く、体全体を引っ張られた。
親指を引っ張るとき急所になるというが、
あまりの恐怖に悲鳴さえも出せず、
あ、あ、と小さい声しかでなかった。
バックに防犯ブザーがついてることを
思い出し、急いで、引っ張った。
ビービービーと高く響く音にびっくりした
男は慌てて立ち去った。
息を荒くして、呼吸を整える。
外は真っ暗に街灯がぼんやりと光っていた。
ぺたんと地面に座る梨花は、
静かに泣いた。
ものすごく怖かった。
全く知らない人に後ろからつかまれて、
口をハンカチで塞がれた。
防犯ブザーを持っていて本当によかった。
裏路地から抜け出せなくて、ずっと座っていると
同校生徒の後輩らしい人たちが笑いながら、
通り過ぎていく。
助けてという声も出せない。
それどころではない。
腰が抜けて、何もできない。
がくっとうなだれて、
地面をずっと見ていた。
このままにしていても家に帰ることはできない。
そんなことはわかっている。
でも何もできない自分がいた。
すると、近くにあった段ボールの中から、
子猫の鳴き声が聞こえた。
さっきまで聞こえなかったはずの子猫がいたのだ。
昼寝でもしていたのだろうか。
意識をここに向けていなかったからか。
子猫の様子を見たかった。
立ちあがろうとした。
梨花がふらっとめまいがして、倒れそうになる。
さっと誰かわからないが、腕がのびてきた。
「きゃーー。」
今度は悲鳴を上げられた。
「おい!!」
梨花の体を支えたのは、朔斗だった。
悲鳴をあげたことにイラついている。
「さ、朔斗。
なんでここに?」
「なんでここにって、お前こそ。」
「あ、ああ……。」
ぺたんとまた地面に座った。
力はなかった。
足の震えがとまらなかった。
梨花の前に朔斗は背中を見せた。
「ん。」
「え?」
「歩けないんだろ。
乗れって。」
おんぶするということだろうか。
梨花は、拍子抜けしてびっくりした。
背中に乗ったが、すぐにまたおりて
ぺたんと地面に座る。
「何、やってるんだよ。」
「だって、恥ずかしいだもん。
他の人に見られちゃう。」
同級生や先輩に見られたら恥ずかしいお年頃だ。
「は?
んじゃ、俺、何もしないからな。」
なんだか面倒になった朔斗は、そのまま
駅に向かっていった。
「え、待って。
待ってってば。」
声が小さく、届かなかった。
助けてくれようとしたのに、
願いは叶わなかった。
背中に乗ればよかったと、
涙を流して、膝を抱えて
落ち込んだ。
走って戻ってくる朔斗がまた梨花の前に
現れる。
「な、なんで。」
「いいから。」
「うん。」
梨花は黙って、朔斗の背中に背負われながら、
家路を急いだ。
幼馴染帰る方向は同じ。
こんなに急接近するとは思っていなかった。
梨花は、怖い思いしたのに、
朔斗の背中にいるとそんなこと
どうでも良くなった。
イヤホンを耳につけて、
いつも通りに高校から最寄りの駅に
歩いて向かう。
外は少し薄暗くなっていた。
高校生は危ないから1人でなるべく帰らないようにと
学校では言われているが、帰る方向が違うのならば、
結局1人で帰らなくてはいけない。
途中まで一緒に帰ってくれる中学の同級生もいたが、
親が迎えに来るからと別々になる。
梨花は1人寂しくゆっくりと
石畳の歩道をまっすぐ歩いていた。
数十メートル先に同校生徒のカップルが
歩いていたりするが、後ろは誰もいない。
バックを持ち直した。
交差点近くの曲がり角に進もうとすると、
誰もいなかったはずの後ろからカツカツと
靴音が響いた。
まさか尾行されているのだろうか。
こんな自分を追いかける人なんて誰もいないだろうと
たかをくくっていると、
梨花の予感は的中、
中肉中背の帽子とマスクをつけた男に
裏路地にぐぐっと体をひっぱられ、
口元はハンカチで塞がれた。
誘拐されているのか自分と、必死で逃げようとしたが、力が強く、体全体を引っ張られた。
親指を引っ張るとき急所になるというが、
あまりの恐怖に悲鳴さえも出せず、
あ、あ、と小さい声しかでなかった。
バックに防犯ブザーがついてることを
思い出し、急いで、引っ張った。
ビービービーと高く響く音にびっくりした
男は慌てて立ち去った。
息を荒くして、呼吸を整える。
外は真っ暗に街灯がぼんやりと光っていた。
ぺたんと地面に座る梨花は、
静かに泣いた。
ものすごく怖かった。
全く知らない人に後ろからつかまれて、
口をハンカチで塞がれた。
防犯ブザーを持っていて本当によかった。
裏路地から抜け出せなくて、ずっと座っていると
同校生徒の後輩らしい人たちが笑いながら、
通り過ぎていく。
助けてという声も出せない。
それどころではない。
腰が抜けて、何もできない。
がくっとうなだれて、
地面をずっと見ていた。
このままにしていても家に帰ることはできない。
そんなことはわかっている。
でも何もできない自分がいた。
すると、近くにあった段ボールの中から、
子猫の鳴き声が聞こえた。
さっきまで聞こえなかったはずの子猫がいたのだ。
昼寝でもしていたのだろうか。
意識をここに向けていなかったからか。
子猫の様子を見たかった。
立ちあがろうとした。
梨花がふらっとめまいがして、倒れそうになる。
さっと誰かわからないが、腕がのびてきた。
「きゃーー。」
今度は悲鳴を上げられた。
「おい!!」
梨花の体を支えたのは、朔斗だった。
悲鳴をあげたことにイラついている。
「さ、朔斗。
なんでここに?」
「なんでここにって、お前こそ。」
「あ、ああ……。」
ぺたんとまた地面に座った。
力はなかった。
足の震えがとまらなかった。
梨花の前に朔斗は背中を見せた。
「ん。」
「え?」
「歩けないんだろ。
乗れって。」
おんぶするということだろうか。
梨花は、拍子抜けしてびっくりした。
背中に乗ったが、すぐにまたおりて
ぺたんと地面に座る。
「何、やってるんだよ。」
「だって、恥ずかしいだもん。
他の人に見られちゃう。」
同級生や先輩に見られたら恥ずかしいお年頃だ。
「は?
んじゃ、俺、何もしないからな。」
なんだか面倒になった朔斗は、そのまま
駅に向かっていった。
「え、待って。
待ってってば。」
声が小さく、届かなかった。
助けてくれようとしたのに、
願いは叶わなかった。
背中に乗ればよかったと、
涙を流して、膝を抱えて
落ち込んだ。
走って戻ってくる朔斗がまた梨花の前に
現れる。
「な、なんで。」
「いいから。」
「うん。」
梨花は黙って、朔斗の背中に背負われながら、
家路を急いだ。
幼馴染帰る方向は同じ。
こんなに急接近するとは思っていなかった。
梨花は、怖い思いしたのに、
朔斗の背中にいるとそんなこと
どうでも良くなった。