幸せの欠片たち。
あれは、高ニの一月末頃。
今日みたいに、厳しい風の吹く帰り道。
その日は小テストの点数が少し低めになってしまったり、日直に当たって担任にこき使われたりと、踏んだり蹴ったりな一日だった。
お陰で一人で帰らなければならなくて、ひゅうっとそんなに厚くない制服のコートに風が入り込んでくるのに、しかめっ面をしつつ家へと急いだんだ。
そんな中で、ふと視線の先に彼が家へと帰って行くのを見掛ける。

私はそれだけで嬉しくなって、その後ろにそっと近付いて行って、背後からワッと驚かせようとしたのだけれど…。

その周りに、彼の友達が何人かいることに気付いて、大人しく距離を取った。

そして、暫く歩いて行くと、彼等が自販機の前辺りで止まってしまったから、慌てて物陰に隠れることになった。

それが、悪かったのかもしれない。
その内の、多分一番の親友なんであろう一人が、揶揄うように、彼にこう問い掛けた。


「あのさー、詠太郎ー?あの子…幼馴染だっけか?毎日飽きもしねぇで、お前に告ってるけどさ、お前なんとも思ってないのかよ?」


どくん


嫌な予感が背中を粟立てる。
この先はきっと聞いてはいけない。
そんな風に思うのに、私の足は凍ったようにその場から動けなかった。


「あー……アレな。あんなんただの挨拶みたいなもんだろ。それに俺…」

「あー!分かった!詠太郎くん、もしかして好きな子いるんじゃないのー?やだ!そしたら、あの子可哀想じゃーん!」


彼の言葉を遮って、私の知らない彼の友達…取り巻きの中の女の子達が、そう囃子立てる。


がつんっと鈍器で後頭部を思い切り殴られたような気がした。

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