エンドレス・ラプソディ
──そうして俺は、朝焼けを浴びていま、ここにいるのだ。
「これからどうすれば……」
どうやってホテルまで戻ろう。ホテルに戻るまでに絶対に見つかる。とにかく隠れようと、素っ裸で寒さに震えながら路地裏に駆け込む。
辺りを見回しても布きれ一つない。これはやばい、どうする!?
「あんちゃん、真っ裸でどうした?」
背後からの声に驚いて振り返ると、そこには四十代にさしかかろうという男がいた。その足下には大きな紙袋が二つほどある。
無精ひげで、着ているものも、お世辞にも綺麗とはいえない。見るからにホームレスだ。しかし、これは天の助けだ!
「あ、すいません。あの、何か着るもの、ないですか?」
両手で股間を隠しつつ頼んでみる。すると、男は怪訝な表情を浮かべながらも、訳ありだと推測したのか口元を緩めた。
「綺麗じゃないけど、これでも着ろよ」
「あ、ありがとうございます! あとで必ずお返しします!」
渡された白いワイシャツと黒のパンツを着ながら礼を述べる。下着はさすがに考慮してくれたのか、貸してくれなかった。ホテルはすぐそこなので、裸足で大丈夫だ。
「ああ、別にいいよ。古着だし」
「そんな訳にはいきません! できましたら、よくいる場所とか、教えてくれませんか?」
「あー……。そこの公園には、よくいるな。今日は炊き出しもしてくれているし」
「わかりました! すぐ戻って公園にいきますね!」
「気にしなくていいから」
俺は男の声を背中に受けながら、急いでホテルに戻る。