エンドレス・ラプソディ
「か、金を出せ!」

 男は強い口調で発するが、その声はオモチャの拳銃を持つ手と同様、小刻みに震えている。店員の青年は、男の顔と拳銃を交互に見やり戸惑っていた。

 男の格好は、お世辞にも清潔とはいえない。来ているオーバーは薄汚れて、所々ほつれている。

 きっと、事情があるんだな。俺がそう思ったということは、店員もそう考えたのだろう。

「あの、どうしてお金が欲しいんですか」

 青年は勇敢(ゆうかん)にも問いかけた。

「いいから金を出せって!」

「ギャンブルとかですか?」

「う、うるせえ! オレはな、あした食う金もねえんだよ。借金もあって、もう終わりだ。だから何やったって怖くねえんだよ! わかったなら早く金を出せ!」

 なんだかんだで、しっかりと説明している。

 そんな男の様子を目の前で見ていた青年は、オモチャの拳銃ということで強気に出たのか、説得を試みようと瞳を輝かせた。

「えと、あの。店内でお召し上がりでしょうか」

 緊張のあまり、とんでもない返答をした。
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