エンドレス・ラプソディ
「なんだこれ。金は!?」

「あの。是非、食べてみてください!」

 勢い込んで差し出されたトレイに視線を落とした男は、湯気を立てている肉じゃがに(つば)を飲み込む。

 新人くんは、バイオマスプラスチックのフォークスプーンを透明の袋から取り出し、カップに添えた。

 湯気と共に立ち(のぼ)る甘い匂いに刺激されたのか、男は左手でフォークスプーンを掴むとよく煮込まれているジャガイモをすくって口に含んだ。

 その途端、男の表情は緩み、次に牛肉を頬張ると包丁をカウンターに投げおき、フォークスプーンを右手に持ち替えカップを持ち上げて貪(むさぼ)るように食べ始めた。

「美味いなあ……。美味いなあ」

 涙ぐみながらか細く発する。それを見た新人くんは、今度はすき焼きをカップについで差し出すと、中に入っている半熟卵をつぶしてそれも口に詰め込んでいく。

「お気に召して頂けてうれしいです」

 そんな新人くんの笑顔に、男は手を止めて青年の顔を見つめた。

「お代は結構ですから、どんどん食べてください」

 新人なのに大将みたいな発言をして凄いなと感嘆した。

 それから、男は涙を流して「警察を呼んでほしい」と青年に頭を下げ、通報でやってきたお巡りさんに連れられていった。




 
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