ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
週が明け、凪咲はいつものようにブースにいた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


来客をにこやかに出迎える凪咲の姿は、普段通りに見える。しかし、その内側に抱えているものは、これまでとは異なるものがあった。


2日前、廣田耕司との話を終えた凪咲は、兄の運転する車で実家に向かった。体調を崩して、臥せっているという父親を見舞うためだ。久しぶりに実家の門を潜り


「ただいま。」


とやや遠慮がちに声を上げると、パタパタと足音がしたかと思うと


「おかえり、凪咲。」


母の正美がにこやかに彼女を出迎えた。


「お父さん、どうなの?」


兄と充希と共に実家に上がりこんだ凪咲は、母に尋ねる。


「1週間前に店で急に倒れて、慌てて救急車で病院に運んだのよ。」


「えっ、そうだったの?なんですぐに知らせてくれなかったの?」


「すぐに精密検査をしてもらったんだけど、お医者さんが言うには『特別に悪いところはありません。ちょっと疲れがたまっただけでしょう』っておっしゃるし、本人も『お前たちが大袈裟に騒ぐからだ。わざわざ凪咲に知らせて、余計な心配を掛ける必要はない』なんて言うからね。でも実際、3日で退院できたんだけど、やっぱりまだシンドイみたいで・・・。本人は絶対に認めないけど、お父さんももう若くはないからね。」


「そっか-・・・。」


「それで、勉や充希ちゃんとも相談して、やっぱりあんたに知らせようってことになったんだよ。」


「わかった。」


そんな話を聞きながら、居間に入ると、父はパジャマ姿で座って、TVを見ていた。


「お父さん、ただいま・・・って、寝てなくていいの?」


凪咲が声を掛けると、直也はびっくりしたような表情で


「おお、凪咲。どうした?」


と尋ねて来る。


「どうしたって、お父さんが倒れたっていうから、帰って来たんじゃない。」


「そうか・・・そりゃ悪かったな。母さん、なんで知らせた?俺は大丈夫だって言っただろう。」


「そういう問題じゃないでしょ?こんな大事な時に、娘をつま弾きにしないで欲しいんだけど。」


「とにかく心配するな。俺は大丈夫だと言ってるのに、母さんも勉もまだ寝てろってうるさくてな。人を病人扱いしやがる。」


憮然とした表情の直也に


「何言ってんだよ、立派な病人じゃないか。」


勉は呆れ顔だ。
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