ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「バカ言うな。退院出来たってことは、もう病人じゃないってことだ。」


「退院出来たのは、入院治療から自宅療養に切り替わっただけよ。」


「とにかくだ、『いい肉、おいしい肉を食べたいなら菱見さんの所』と地元のお客様からの絶対の信頼を頂いている以上、いつまでもこんなことはしてられんのだ。いいか、週明けから店を開けるからな。」


「はいはい、わかりました。凪咲が帰って来たからって、無理していいとこ見せようとしなくていいから。だいたい、週明けからなんて、仕入れも何も止めちゃってて、出来るはずないのは、お父さんが一番わかってるでしょ。」


母に窘められて、とうとう何も言えなくなった父に


「そうだよ。ここまで元気になったんだから、もう少しの我慢だよ、お父さん。これで無理して、またすぐダウンなんてことになったら、それこそお客様にご迷惑をお掛けすることになっちゃうよ。」


凪咲が、ダメ押しするように言うと


「ま、まぁそうだな・・・。」


直也は、仕方なさそうに黙った。この日は実家に泊まり、久しぶりにのんびりと家族団らんの時間を過ごした凪咲は、帰り際に


「じゃお父さん、絶対に無理しちゃダメだからね。」


と改めて釘を刺すように言うと


「わかった。お前も、あんまり頑張り過ぎないようにな。」


父がポツンとそんな言葉を返した。ハッとしたような表情を浮かべた凪咲は


「うん、ありがとう。じゃ、また来るから。」


そう言って笑みを見せると


「ここはお前の実家であり、生まれ故郷なんだ。いつでも気楽に帰って来い。」


そう言って、直也も笑った。


実家を辞し、駅に向かう車の中で


「ありがとうな。やっぱり親父を元気づけるには、お前の顔を見せてやるのが一番だ。」


「そうだね。おじさん、本当に嬉しそうだったから。」


と勉と充希に言われ


「そうかな。なら、よかった。」


凪咲は笑顔になる。


「鳳凰さんへの手前もあって、いろいろ厳しいことを言っていたが、本当はお前のことが可愛くて、そして本当に心配してるんだ。だから、もうお前もあんまり意地を張らなくてもいいんだぞ。」


「おにい・・・。」


「廣田くんからもああ言われたんだし、とにかく1度、自分の気持ちを整理してみた方がいいよ、凪咲。」


「そっか、そうだよね・・・。」


親友の言葉に、凪咲がコクリと頷いた。
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