ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「ごめん、邪魔しちゃって。じゃ、頑張ってね。」
そう声を掛けて、歩き出した理沙は、ふと足を止めると
「菱見さん、いろいろ大変だろうけど、よろしくね。」
と小声で凪咲に囁く。えっという表情で自分を見る凪咲に、理沙はちらりと笑みを送ると、そのままエレベ-タ-に向かう。
(三嶋さん・・・。)
その颯爽とした後ろ姿を、凪咲はなんとも言えない気持ちで見送っていると
「かっこいいなぁ、三嶋さん・・・。」
思わず千晶が呟く。理沙は2ヶ月前まで、受付ブースのチ-フを務めていたが、辞令を受け、常務秘書に転任。後任に貴恵が昇格し、更に千晶がその穴埋めに総務課から異動して来たという関係になる。
「私と違って、理沙さんは優しいからね。」
そこに応対を終えた貴恵が、そう言いながら、ギロリと千晶に視線を送る。
「えっ、あ・・・貴恵さんももちろんカッコいいです。外国のお客様相手に、あんな流暢に・・・憧れます。」
慌てて取り繕うように言う千晶に
「ありがとう。」
とそっけなく言った貴恵は
「でも理沙さんは三か国語だから。」
「えっ?」
「私は英語だけだけど、あの人は英仏独、三か国語がペラペラなの。」
「そうなんですか?」
「あの人、最初は洗剤売ってたのよ。それが1年で、いきなり建築部門に異動して、プロジェクトに参加して、海外と国内を往復しながらバリバリやってたと思ってたら、突然チ-フとして受付にやって来て。そして2年務めたら、今度は常務のお声掛かりで秘書。同じ秘書課だけど、受付から秘書に転身した人なんかあんまり聞いたことないし。もっともあの人は、秘書検定1級も持ってるそうだから。」
「はぁ・・・。」
「とにかく、私なんかとは比べ物にならない凄い人なのよ、あの人は。」
と早口で語った貴恵の言葉には、しかし冷ややかな感情が含まれていることが、凪咲にも千晶にも感じられた。
「もうこんな時間か。じゃ私、休憩に入るからよろしくね。」
時計を見て、そう言った貴恵は、そのままブースを離れて行く。
「貴恵さんと理沙さん、仲悪かったんですか?」
声が届かなくなったのを見計らって、小声で尋ねて来る千晶に
「仲悪いっていうのとはちょっと違うかな。でも・・・まぁいろいろ複雑な感情があるのよ、特に桜内さんの方には。」
答えた凪咲は、1つため息をつくと苦笑いを浮かべた。
そう声を掛けて、歩き出した理沙は、ふと足を止めると
「菱見さん、いろいろ大変だろうけど、よろしくね。」
と小声で凪咲に囁く。えっという表情で自分を見る凪咲に、理沙はちらりと笑みを送ると、そのままエレベ-タ-に向かう。
(三嶋さん・・・。)
その颯爽とした後ろ姿を、凪咲はなんとも言えない気持ちで見送っていると
「かっこいいなぁ、三嶋さん・・・。」
思わず千晶が呟く。理沙は2ヶ月前まで、受付ブースのチ-フを務めていたが、辞令を受け、常務秘書に転任。後任に貴恵が昇格し、更に千晶がその穴埋めに総務課から異動して来たという関係になる。
「私と違って、理沙さんは優しいからね。」
そこに応対を終えた貴恵が、そう言いながら、ギロリと千晶に視線を送る。
「えっ、あ・・・貴恵さんももちろんカッコいいです。外国のお客様相手に、あんな流暢に・・・憧れます。」
慌てて取り繕うように言う千晶に
「ありがとう。」
とそっけなく言った貴恵は
「でも理沙さんは三か国語だから。」
「えっ?」
「私は英語だけだけど、あの人は英仏独、三か国語がペラペラなの。」
「そうなんですか?」
「あの人、最初は洗剤売ってたのよ。それが1年で、いきなり建築部門に異動して、プロジェクトに参加して、海外と国内を往復しながらバリバリやってたと思ってたら、突然チ-フとして受付にやって来て。そして2年務めたら、今度は常務のお声掛かりで秘書。同じ秘書課だけど、受付から秘書に転身した人なんかあんまり聞いたことないし。もっともあの人は、秘書検定1級も持ってるそうだから。」
「はぁ・・・。」
「とにかく、私なんかとは比べ物にならない凄い人なのよ、あの人は。」
と早口で語った貴恵の言葉には、しかし冷ややかな感情が含まれていることが、凪咲にも千晶にも感じられた。
「もうこんな時間か。じゃ私、休憩に入るからよろしくね。」
時計を見て、そう言った貴恵は、そのままブースを離れて行く。
「貴恵さんと理沙さん、仲悪かったんですか?」
声が届かなくなったのを見計らって、小声で尋ねて来る千晶に
「仲悪いっていうのとはちょっと違うかな。でも・・・まぁいろいろ複雑な感情があるのよ、特に桜内さんの方には。」
答えた凪咲は、1つため息をつくと苦笑いを浮かべた。