ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
裕が会社に現れなくなってから2週間以上が過ぎていた。その存在が、社内で話題になることもほとんどなくなる中
「ジュニア、もう会社に戻って来ないんですかね?」
ブ-スでポツンと寂しそうに呟いたのは千晶だった。
「さぁね?まぁなんて言っても社長の息子だから、クビになったわけじゃないだろうから、ほとぼりが冷めた頃、ノコノコ現れる可能性は否定出来ないけどさ・・・。」
「そうですよね、きっと帰ってきますよね?」
貴恵と千晶のそんな会話を横で聞きながら
(そうだよね、いずれ裕はまたここに戻って来るんだよね・・・。)
凪咲は内心でため息を吐く。いずれ、裕とまた顔を合わせることになる、そのことが凪咲には憂鬱だった。凪咲はもう気付いている、なぜ、自分が東京に留まりたかったのか。それはもう1度、裕に会いたかったからだ。彼に会って、自分の気持ちをキチンとぶつけたい。その一心からだったのだと。
もちろんその当てがあるわけではなかった。半年、一緒に暮らしたにも関わらず、彼は凪咲が自分の後を追ったり、探すことが出来ないようにするかのように、一切の手がかりを残さなかった。それでも、凪咲は諦められなかったのだ。東京にさえいれば、再会の可能性は絶対にある、何か手がかりがつかめるかもしれない。そう信じていたのだ。
そして実際、彼は再び、自分の前に現れたのだ。凪咲がAOYAMAに転職したのは、全くの偶然だ。これはやはり運命なのかもしれない、そう思いたかった。
しかし現実は残酷だった。待ち望んだ再会は、しかし彼女が抱き続けた裕への想いを打ち砕いただけだった。再び自分の前に現れた彼の言動は、彼女を心底失望させた。
凪咲の中では、裕への想いは徐々に消えて行き、逆に「再会しなければよかった」という後悔が大きくなって来ていた。
気が付けば、彼女がAOYAMAに派遣社員として勤務し始めてから2年半が過ぎ、派遣社員が同一事業所の同一部署で就業できる期限である3年はまもなくだ。凪咲は別の派遣先を探すか、AOYAMAの中で別の部署への異動を求めるかの選択を強いられることになる。が、今の凪咲には、そのいずれをも求める気がなくなっていた。契約切れを待って、いやそれを待たずにもう退職、帰郷しよう。まだ、誰にも話してはいないが、そんな思いが徐々に、彼女の中で固まりつつあったのだ。
「ジュニア、もう会社に戻って来ないんですかね?」
ブ-スでポツンと寂しそうに呟いたのは千晶だった。
「さぁね?まぁなんて言っても社長の息子だから、クビになったわけじゃないだろうから、ほとぼりが冷めた頃、ノコノコ現れる可能性は否定出来ないけどさ・・・。」
「そうですよね、きっと帰ってきますよね?」
貴恵と千晶のそんな会話を横で聞きながら
(そうだよね、いずれ裕はまたここに戻って来るんだよね・・・。)
凪咲は内心でため息を吐く。いずれ、裕とまた顔を合わせることになる、そのことが凪咲には憂鬱だった。凪咲はもう気付いている、なぜ、自分が東京に留まりたかったのか。それはもう1度、裕に会いたかったからだ。彼に会って、自分の気持ちをキチンとぶつけたい。その一心からだったのだと。
もちろんその当てがあるわけではなかった。半年、一緒に暮らしたにも関わらず、彼は凪咲が自分の後を追ったり、探すことが出来ないようにするかのように、一切の手がかりを残さなかった。それでも、凪咲は諦められなかったのだ。東京にさえいれば、再会の可能性は絶対にある、何か手がかりがつかめるかもしれない。そう信じていたのだ。
そして実際、彼は再び、自分の前に現れたのだ。凪咲がAOYAMAに転職したのは、全くの偶然だ。これはやはり運命なのかもしれない、そう思いたかった。
しかし現実は残酷だった。待ち望んだ再会は、しかし彼女が抱き続けた裕への想いを打ち砕いただけだった。再び自分の前に現れた彼の言動は、彼女を心底失望させた。
凪咲の中では、裕への想いは徐々に消えて行き、逆に「再会しなければよかった」という後悔が大きくなって来ていた。
気が付けば、彼女がAOYAMAに派遣社員として勤務し始めてから2年半が過ぎ、派遣社員が同一事業所の同一部署で就業できる期限である3年はまもなくだ。凪咲は別の派遣先を探すか、AOYAMAの中で別の部署への異動を求めるかの選択を強いられることになる。が、今の凪咲には、そのいずれをも求める気がなくなっていた。契約切れを待って、いやそれを待たずにもう退職、帰郷しよう。まだ、誰にも話してはいないが、そんな思いが徐々に、彼女の中で固まりつつあったのだ。