ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「凪咲さん。」


そんな思いに耽っていた凪咲を、現実に呼び戻すような声がして、彼女は隣を見た。


「うん?」


「で実際、ジュニアってどんな人なんですか?」


千晶が唐突に尋ねて来るから驚いて、周囲を見回すと、来客の波は途絶え、貴恵の姿もない。


「チ-フは?」


「第2会議室のセッティングに行きました。それより、私の質問に答えて下さいよ。」


「見た通りの人じゃない?」


冷たくそう答えた凪咲だが


「本当にそう思ってます?」


「えっ?」


そう問い返されて、思わず凪咲は千晶を見た。


「昔は真面目だったんですよね?」


「うん。でもあの頃は面倒くさいことに巻き込まなかったから、猫被ってただけだって、本人が言ってたし。」


「それ、本当なんですかね?」


「どういうこと?」


「面倒臭いことに巻き込まれたくなかったはずの人が、凪咲さんの偽彼氏に立候補して、わざわざ凪咲さんの実家にまで挨拶に行って、更には同居までして、凪咲さんを助けてくれたんですよね?」


「うん・・・。」


「普通、そこまでします?」


「・・・。」


「凄くいい人だと思いますよ。そして、たぶんとっても勇気がない人。」


「・・・。」


「ジュニア、絶対凪咲さんのこと好きだったんですよ。じゃなきゃ、偽彼氏も偽装同棲も自分から買って出てまでしません。ううん、頼まれたって絶対引き受けないと思いますよ、普通。そう思いません?」


「それは・・・。」


「その上、半年同じ屋根の下で暮らしながら、凪咲さんに手を出さなかったんでしょ?凄く真面目で、でも相当なヘタレだと思います。」


「千晶ちゃん・・・。」


その言葉に、やや茫然としたように、千晶を見る凪咲。


「昔は猫被ってたって言う話も、むしろ、逆だと思います。たぶん、今が自分を偽って見せてるんですよ。」


「なんで・・・どうして、そんなことを・・・?」


思わず問い掛けた凪咲に


「それは・・・私にはわかりません。」


と言って首を振る千晶。


「えっ?」


「だから、私はジュニアに興味があるんです。」


そう言った千晶は、次にニッコリと微笑んで見せた。
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