ウソから出たマコト～ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋～

「あの間、お前と仕事の話、何度した？いや、その前から、ちゃんと知ってるよ、お前が優秀な社員だったのは。お前と住む前から、ちゃんと見てたんだ。」


「住む前から・・・？」


思わず聞き返した凪咲に


「いや、それは・・・その同期として、凪咲のことはよく知ってたって意味だよ。」


慌てて取り繕うように言った裕は


「とにかく、今の俺には凪咲が、凪咲の力が必要なんだ。俺の側に居て、支えて欲しいんだよ。頼む、力を貸してくれ。｣


訴えるように言って、凪咲に頭を下げる。そんな裕の姿を見て、1つため息を吐いた凪咲は


「ごめんなさい。」


そう言って、もう1度、裕に頭を下げた。


「凪咲・・・。」


表情を歪める裕に


「とにかく、急にそんなこと言われても、正直頭がついていかないし、それに・・・私にはもう時間があんまりないんだ。」


凪咲は静かに言葉を継ぐ。


「時間がないって・・・？」


「知ってるでしょ？派遣社員って同一会社の同一部署に勤務出来るのは、3年までなんだよ。」


「だから、それは秘書に変われば、問題なくなるだろう。」


「それはそうなんだけど、もう1つ・・・実は、これまだ、誰にも言ってないことなんだけど、私、派遣契約の終了に合わせて、ううん、ひょっとしたら、その前にも実家に戻ろうと思ってるんだ。」


「えっ、どういうことだよ？」


予想もしなかった凪咲の言葉に、驚きを隠せない裕だったが


「なんか疲れちゃって、こっちの生活に。それに・・・最近、あの幻のお見合い相手と、ちょっといい雰囲気になっててさ。」


「なんだって！」


その凪咲の言葉に、思わず気色ばんで立ち上がった。


「なんだよ、それ？ふざけんなよ。凪咲は、俺とのあの半年を無にするつもりなのかよ！｣


裕の言葉に、ハッとしたように彼を見つめた凪咲は


「そっか、そういうことになるよね・・・それについては謝ります。」


と言って、深々と頭を下げた。しかし顔を上げると


「だけど・・・私の気持ちはもう、そちらに傾いているの。だから・・・私はあなたと一緒にはやれないし、あなたの側にいるべきでもないと思う。ごめんなさい。」


そう言って、一瞬悲しそうな表情を浮かべた凪咲は、もう一度、頭を下げると、立ち上がると


「凪咲！」


呼び止める裕の声に振り向くことなく、部屋を出た。