ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
それから1週間後、裕をリーダ-にした業務改善委員会が正式に始動した。全員が揃った初ミーティングで、裕はメンバ-に20ページに渡るペーパーを配布し


「これは、俺が約1ヶ月に渡って、若手の女子社員を中心に聞き取った、現状の会社業務に対する、疑問や改善要望をまとめたものです。なぜ女子を中心に聞き取りをしたかというと、こういう場合、胸襟を開いてくれさえすれば、女子の方が男子より、率直にモノを言ってくれることが1つ、もう1つは単純に俺が女子たちとお近づきになりたかったからという下心です。」


そう言って笑わせた後


「彼女たちの多くは『ウチはこういう会社だ』『君が担当する業務とはこういうものだ』と教えられ、日々の業務を遂行する最前線にいます。でも、幹部やベテラン社員にとっては、当たり前になってしまっていることの中で、社歴の浅い彼女たちが、『なぜ?どうして?』と感じていることは絶対にあるはずだ。そして、それを知ることが、この委員会の第一歩だと思ったからです。今回ここに集まってもらったのは、比較的彼女たちと世代が近いメンバ-です。彼女たちの意見に共感出来るものもあれば、違うんじゃないのと思うことも当然あるはずだ。それを一つ一つ潰していくことから、スタ-トして行きましょう。」


と言って、彼らを見回し


「ペーパ-には、それぞれの項目に対して、どのように対策すべきか、あるいは現状を是とすべきと考えた項目に関しては、現場にいかに納得していただくように説明するかの自分の試案を付記していますが、あくまでこれは俺が頭の中だけで考えた、机上の論理です。実際に現場を知ってるみんなにとっては、首を傾げるものも多いかもしれない。でも現場を知らない人間の戯言の中から、見えて来ることもあるに違いない、そう思って、まとめたものです。これが絶対正しいとも思ってないし、拘るつもりも全くないが、一応目は通して、頭の片隅に置いておいてくれるとありがたい。ということで、今日からよろしくお願いします。」


と呼び掛けると、メンバーたちは頷いた。


いよいよ動き出したプロジェクト。突然、これまでの部署、担当業務から引き離され、正体不明のプロジェクトに放り込まれたメンバーたちは、当初は戸惑い、不安を隠せなかったが、リーダーたる裕が明確な指針を示し、彼らを引っ張って行く姿勢を見せたことで、まとまり、そして活き活きと動き出した。
< 125 / 178 >

この作品をシェア

pagetop