ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
最初の3日間は、侃々諤々のディスカッションを重ねた彼らは、手を付けるべき部署、業務の優先順位をある程度定めると、手分けをして現場へ飛び出して行った。もちろん、裕自身もだ。


「当然、最初は反撥もある。若造どもが何を生意気なことをなんて、言われることもあるかもしれない。それに仕方ないんだが、俺もグータラ御曹司と社内で舐められてる部分もあるからな。」


その日の業務を終え、執務室に戻った裕は、コーヒ-を煎れてくれた三嶋理沙に苦笑交じりに言う。


「そんなことありませんよ。」


首を振る理沙に


「そんなことあるんだよ、残念ながら。でもそんなことで、めげてたら、この委員会を立ち上げた意味はない。とにかく、このプロジェクトは社長直轄なんだ。いざとなれば、その権威をちらつかせることも辞さない。そのつもりでやってくれとみんなには発破を掛けている。」


と続ける裕。


「そうですね、頑張ってください。常務も期待されてます。」


「栗木さんには、君をお借りさせていただいてるし、感謝してるよ。もちろん、三嶋さんにも。」


「いえいえ。私も多少なりとも、新城さんのお力になれて、嬉しいですから。」


理沙は笑顔で答えた。


プロジェクトは動き出したがリーダ-である裕の秘書は、決まらないままだった。あの後、凪咲は派遣元会社を通じて、正式に契約期間終了に伴い、退職したい旨を申し出て来ていた。


やむを得ず、常務秘書の理沙が、当面リーダ-秘書を務めることになった。かねて全面的にこのプロジェクトに賛同している、彼女の主である栗木常務が、現在長期海外出張中で不在だったからだ。


その後、明日の打ち合わせをして、リーダ-執務室を辞した理沙が、秘書課のオフィスに入ると


「あっ、三嶋さん。お疲れ様。」


課長が声を掛けて来る。


「お疲れ様です。」


「ジュニアは?」


「少し、書類を整理してから、お帰りになるそうです。私も常務のオフィスを確認してから、失礼します。」


「ありがとうね。あなたには無理言っちゃって。」


「いえ。でも、常務も間もなく、帰国されます。このままというわけには・・・。」


「わかってるんだけどね。人事部からは、何人か候補を推薦されてるんだけど、ジュニアがなかなか首をタテに振ってくれなくて・・・。」


困り顔で課長が言った。
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