ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「それに・・・あの人はまだなにかを隠している、そんな気がするんです。」


「菱見さん・・・。」


「本当の新城裕さんって、どんな人なんでしょうね?私にはわからない、たぶん私の手になんかには、負えない人なんだと思います。まして、彼はAOYAMAの御曹司、とても私では釣り合いの取れる相手じゃありません。」


そう言って、フッと笑顔を浮かべた凪咲だったが、その笑顔はやけに寂しそうに、理沙の目には映った。


「菱見さん。」


「はい。」


「私、本当は、あなたと仕事一緒に出来なかったはずだったの。」


「どういうことですか?」


「あなたが入社して来た時には、私は寿退社して、もう会社にはいないはずだった。」


「三嶋さん・・・。」


「私、海外営業部時代に同じプロジェクトに所属していたの2年先輩から告られて、付き合い始めた。プロジェクトの成功の為に、力を合わせて頑張ったし、もちろんいろんな所に一緒に行った。公私ともに、一緒の時間を過ごしているうちに、ああ、私、この人とこのままずっと一緒にいることになるんだろうなって、思ってた。その通り、やがて彼からプロポ-ズされて、私は何の躊躇いもなく頷いた。それからふたりでいろいろと準備をして、挙式の日も決まり、招待状も送って、もうその日を待つばかりのはずだったんだけど・・・ご覧の通り、私は今も独身。ダメになっちゃったんだよ、私が心変わりして・・・。」


「そうだったんですか、知りませんでした・・・。」


「今にして思えば、典型的なマリッジブル-。きっかけは彼に仕事を辞めろって言われたことだった。いったんはOKしたんだけど、だんだんやっぱり嫌だなって思い始めて・・・この人で、この人と結婚して、本当にいいのって、土壇場で逡巡してしまって。結局、私の方から、婚約破棄を申し出たの。」


「・・・。」


「結果、寿退社もなくなって、元婚約者と同じ部署にいるのは気まずかろうと、配慮というか、まぁ邪魔者扱いされて、私はブースに出されちゃったんだよ。」


「そうだったんですか、大変でしたね。でも今どき、そんなことを言う男性がまだいるんですね。三嶋さんが望まれたのならともかく・・・ちょっと驚きです。」


「まぁね。でもさ、実はそれだけが理由じゃないんだよ。」


「えっ?」


「私、ずっと好きな人がいたんだ。」


その言葉に、驚きの表情を浮かべた凪咲に


「私、この会社に入社して、まずラップとか洗剤の販売を担当する日用品部門に配属されてさ。そこでお取引先への営業や、売場のメンテナンスを担当するラウンダ-っていう仕事してた。その時の私の教育担当で、そのまま相棒になった1年先輩がいたの。」


理沙は語り出す。
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