ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
次の日も、凪咲は朝から、華やかな笑顔をたたえてブースに立っていた。


この日も、朝から慌ただしい時間が続いていたAOYAMAのブースだったが、そんな中、トラブルが発生してしまった。商談に使う会議室のダブルブッキングだ。営業部からのきついクレ-ムを受け、ブースは多忙の最中、その対応に当たらなければならなかった。


「向こうは、確かにあなたに連絡したって言ってるんだけど。」


「承った、と思います・・・。」


貴恵に問い質された千晶が、曖昧な返事をすると


「なに、それ?」


貴恵の顔色が変わる。


「すみません。確かちょうど来客が立て込んでいる時で、つい・・・。」


弁明する千晶に


「だから、会議室の予約入力は、承ったら絶対に後回しにしないで、すぐに実施してって、前にも言ったでしょ。」


貴恵の口調が厳しくなるから


「桜内さん、今は来客もいらっしゃいますし、取り敢えず、まずは代替部屋の手配をしないと。」


凪咲が宥めに掛かる。


「それもそうね。そっちは私がやるから、ブースはお願いね。」


「かしこまりました。」


パソコンを叩いて、会議室の空き状況を確認した貴恵は、準備に飛び出して行く。


「凪咲さん、すみません・・・。」


しょげ返る千晶を


「落ち込んでる暇はないよ、今はやるべきことをやるだけ。」


そう言って、励ます凪咲。その言葉に


「はい。」


気を取り直して千晶は頷いた。だが、次に対応したのが、案内が必要な来客で、千晶もブースを離れ、とうとう凪咲ひとりに。もちろん、そんなケースはあるのだが、この日は来客が立て込み、ブ-スが一時的に大渋滞を起こしてしまい、通り掛かった社員が見かねて秘書室に連絡を入れ、前受付チ-フで常務秘書の三嶋理沙が慌てて助っ人に降りてくる事態となった。


戻って来た貴恵は、理沙がブースにいるのを見て、顔色を変えた。


「理沙さん、すみません。」


慌ててブースに入った貴恵に


「お帰り、そっちは大丈夫?」


理沙は尋ねる。


「はい。」


「よかった、じゃあとはよろしくね。」


「三嶋さん、ありがとうございました。」


応援のお礼を言う凪咲に、ニコリと微笑んで見せると、理沙は、ブースを離れて行った。
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