ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「えっ?」


「本当の新城さんを知らないまま、理解しないまま、離れてしまっても。」


「・・・。」


「故郷に帰って、その同級生とお付き合いして、やがて結ばれるかもしれない。その未来を、あなたが本当に望んでいるのなら、私は何も言わない。でも、申し訳ないけど、私にはそうは見えないんだよ。」


そう言った理沙に見つめられて、凪咲は思わず俯いてしまう。そしてまた、沈黙の時が流れる。


「菱見さん。」


どのくらい経っただろう。理沙が、優しく凪咲に呼び掛ける。その声に、顔を上げた凪咲は


「あんな形で、お見合いをお断りした私に、高校生の頃から好きだったんだって、あの人から言ってもらって、正直嬉しかったんです。でも、そんな彼の気持ちに向き合ってみようかなと思えたのは、新城さんへの失望がきっかけだったのは間違いありません。故郷に帰って、同級生と付き合うかもって言ったら、新城さんに怒られました。俺たちの6カ月を無にするのかって。確かにそうだなって、申し訳なく思ったのも事実です。でも最初に無にしたのは新城さんの方じゃないですか!」


そう言った凪咲は


「怖いんです。はっきり言って私、今はあの人と向き合うことが怖いんです。」


とはっきり言った。


「菱見さん・・・。」


「以前彼には強がり言っちゃいましたけど、私、急に彼が私の前から姿を消したのは、本当にショックでした。約束の時間が終わったから、そう言われれば、一言もない。所詮は私の都合で始まった、偽りの同居生活だったこともわかってます。でも、あの半年の間に私たちの間には、それだけじゃない、違う何かが生まれてたはず。少なくても私はそう思ってました。なのに・・・あんな終わり方、終わらせ方は酷過ぎます。」


その言葉に、理沙は思わず息を呑む。
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