ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「再会した時、あの人は言いました。前の会社の時は猫を被ってたって。確かにそうする必要があったのかもしれない。でも、その後も結局、あの人の態度はコロコロ変わって・・・結局私は、ただの1度も本当の新城裕という人を見せてもらってないってことなんです。それなのに『旧知』とか『気心が知れてる』とか言われても、冗談じゃないとしか言いようがないです。私は新城さんのことなんか、何にも知らないんです。そんな人の側に、居たくありません!」


目にいっぱいの涙を浮かべ、感情を爆発させている凪咲の言葉に、理沙は言葉を失うが


「あともう1つだけ、あえて付け加えさせてもらえば、元カノを秘書にした情実人事との陰口を叩かれることは構いません。でも、業務改善という、デリケートで、より厳重な情報管理が求められるはずのプロジェクトのリーダーの秘書が、会社の人間でもない派遣社員というのは、いかがなものか?絶対にそんな批判が上がって来ると思います。私の存在が、せっかくのプロジェクトの足を引っ張ることになることだけは、絶対に嫌なんです。」


と訴えるように言った凪咲の言葉に


(この子は本当にジュニアのことが・・・。)


思わず、彼女の顔を見つめてしまった理沙は、


「菱見さんの気持ちはよくわかったよ。」


と優しく言うと


「実はさ、最近知ったんだけどね。」


「えっ?」


「さっき話した先輩、どうも恋人とうまくいってないらしいんだよね。だから、ワンチャンあるかなって、ちょっと気合い入ってるんだ。『人間諦めが肝心』なんて言葉もあるけど、恋愛は諦めの悪い方が、最後は勝つんじゃないかな?私はそう思ってるんだけど。」


「三嶋さん・・・。」


「まぁそれはともかくとしてさ。」


「はい。」


「常務がまもなく帰って来られるから、私の臨時秘書ももうすぐ終わり。そしたら、ジュニアはたぶん、ううん必ずあなたにもう1度、話を持って行くはずだよ。だってジュニアの意中の人は菱見さん、あなたしかいないんだから。」


「・・・。」


「だから、帰郷はもう1度、ジュニアとキチンと向き合って、自分の本当の気持ちに全て決着を付けてでも遅くないんじゃないかな?これは元上司からの、お節介なアドバイス。」


そう言って笑った理沙を見ながら、凪咲は複雑な表情を浮かべていた。
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