ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
⑳
「どうだ、進捗状況は。」
「業務改善委員会が掲げる『3Mの削減』がリストラに繫がると受け取られ、我々が入り込んだ各現場からの拒否反応がやはり大きかったですが、『原則として現状のプロセスを維持したまま、物事をより良くするための創意工夫を行うこと』が目的であることを説明し、徐々に理解が進んでいます。まだまだこれからですが、いい方向に向かって行っているという手応えがあります。」
プロジェクトが動き出して、あっという間に2週間ほどが経過したこの日、定時を知らせるチャイムが社内に鳴り響くと共に、裕は父である正社長の呼び出しを受けていた。
「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、テレワークの導入・・・社会やマーケットの変化は、我々に現状に留まることを許してくれん。」
「はい。」
「だからこそ、まず当面、我々が取り組まなければならんのは、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の徹底的な削減、排除だ。それなくして、我が社が生き残る道はない。裕、私はお前に、AOYAMAの未来を託したのだ。」
「それも承知してます。」
「いいか、企業のトップはスペシャリストである必要はない。むしろゼネラリストであるべきだが、今のお前は残念ながら、全く逆で、特に経営という、企業のトップとして1番重要で大切な視点が欠落している。これは私の教育不足もあったのは認めるが、とにかく今回のプロジェクトで必ず成果を出して、2年後の株主総会ではお前を晴れて、後継者候補として専務に選任できるようにしろ。いいな。」
と厳しい表情で告げた父に頷いて見せた裕は、この後も父親の長広舌に付き合わされ、内心うんざりしながら社長室を後にした時には、優に1時間が経過していた。
当然プロジェクトメンバ-たちは全員帰宅の途に着いている。ひとり執務室に戻り、デスクで少し書類の整理や明日の準備をしていると、ノックの音がした。彼に来訪者を取り次ぐ役目の代理秘書、三嶋理沙も既に不在で
(こんな時間に誰だ?)
と訝しがりながら
「はい。」
と返事をすると
「早川です。」
営業部の早川雅弘の声がした。
「おぅ、入れよ。」
裕が気軽に答えると
「失礼します。」
入って来た早川はドアを閉めると一礼する。
「業務改善委員会が掲げる『3Mの削減』がリストラに繫がると受け取られ、我々が入り込んだ各現場からの拒否反応がやはり大きかったですが、『原則として現状のプロセスを維持したまま、物事をより良くするための創意工夫を行うこと』が目的であることを説明し、徐々に理解が進んでいます。まだまだこれからですが、いい方向に向かって行っているという手応えがあります。」
プロジェクトが動き出して、あっという間に2週間ほどが経過したこの日、定時を知らせるチャイムが社内に鳴り響くと共に、裕は父である正社長の呼び出しを受けていた。
「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、テレワークの導入・・・社会やマーケットの変化は、我々に現状に留まることを許してくれん。」
「はい。」
「だからこそ、まず当面、我々が取り組まなければならんのは、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の徹底的な削減、排除だ。それなくして、我が社が生き残る道はない。裕、私はお前に、AOYAMAの未来を託したのだ。」
「それも承知してます。」
「いいか、企業のトップはスペシャリストである必要はない。むしろゼネラリストであるべきだが、今のお前は残念ながら、全く逆で、特に経営という、企業のトップとして1番重要で大切な視点が欠落している。これは私の教育不足もあったのは認めるが、とにかく今回のプロジェクトで必ず成果を出して、2年後の株主総会ではお前を晴れて、後継者候補として専務に選任できるようにしろ。いいな。」
と厳しい表情で告げた父に頷いて見せた裕は、この後も父親の長広舌に付き合わされ、内心うんざりしながら社長室を後にした時には、優に1時間が経過していた。
当然プロジェクトメンバ-たちは全員帰宅の途に着いている。ひとり執務室に戻り、デスクで少し書類の整理や明日の準備をしていると、ノックの音がした。彼に来訪者を取り次ぐ役目の代理秘書、三嶋理沙も既に不在で
(こんな時間に誰だ?)
と訝しがりながら
「はい。」
と返事をすると
「早川です。」
営業部の早川雅弘の声がした。
「おぅ、入れよ。」
裕が気軽に答えると
「失礼します。」
入って来た早川はドアを閉めると一礼する。