ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
こうして、凪咲は派遣元を通じて、AOYAMAと契約を結び直し、「業務改善委員会リーダ-秘書」というやや長ったらしい肩書をもらい、ブースを離れることになった。


裕との話が終わった後、そのことを報告しようと、凪咲はすぐに貴恵に連絡を入れたのだが繋がらなかったので、翌朝の朝礼で伝えると


「そっか。まさか、あの後すぐに、ジュニアの所に行ってくれてるとは思わなかった。実は昨夜はさすがにちょっと荒れちゃってたから、全然あなたからの着信に気が付かなかったんだ。ごめん。」


貴恵は照れ臭そうに笑った。


「そうですよ。いくら明日に響くから、もう帰りましょうって言っても、チ-フ全然聞いてくれなくて・・・。あわや終電逃すとこでした。なのに凪咲さんは、とっとと姿を消しちゃうし・・・冷たいなと思ってました。」


と言い出した千晶に


「そうだったんだ・・・ごめんね。」


凪咲は謝ると


「いえ、そういう事情なら、全然納得です。私の方こそ、すみませんでした。」


千晶は慌てて言う。


「ということで、本当に急ですが、今週一杯で受付嬢を卒業せざるを得なくなりました。ご迷惑をお掛けしてすみません。」


「私を秘書にするって言えば、菱見さんがきっと折れてくるって、思ってたんだね。あの男もなかなかやるじゃない。」


「さすがは元カレですね。ジュニアは凪咲さんの性格をよくわかってます。」


「だから、元カレじゃないって。」


「でも、考えてみたら、いい歳した男女が半年もひとつ屋根の下で一緒にいて、何にもなかったなんて、どこのおとぎ話?っ思っちゃいますよ。」


千晶の言い草に、思わず絶句した凪咲に


「菱見さん。」


貴恵は改めて呼びかける。


「私はお蔭で、会社辞めなくて済みそうだから助かったけど、あなたは本当にこれでよかったの?」


「どうなんでしょうね?正直、自分でもよくわかってないですけど、私の力が必要なんだと、あそこまで力説されちゃうと・・・。」


「そっか・・・。」


「だから、私に本当に務まるのか、全然自信もありませんけど、取り敢えず、残りの派遣契約期間の間は頑張ってみようと思います。」


凪咲は自分に言い聞かせるように、そう答えた。
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