ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
エントランスに降りると、既にブ-スには貴恵や千晶の姿はなく、夜間担当の警備員に見送られ、凪咲たちは、そのまま地下駐車場に降り立った。少し歩くと、クロスオーバータイプのSUV車が見えて来た。
「乗ってくれ。」
と裕が言うと、一瞬彼の顔を見たあと、無言で凪咲は助手席に乗り込んだ。続いて、運転席に裕が身体を滑り込ませ、エンジンをスタ-トさせると、車はすぐに地下から、既に夜の帳の降りた街中へと走り出して行く。
「初めてだな、こうやってふたりで車に乗るの。」
「・・・。」
「凪咲と車に乗ったのは、初めてお前の実家を訪ねた時に、おにいさんの運転で、駅との間を往復した、あの時だけだもんな。」
裕が話し掛けても、窓の外に視線を向けたまま、返事もしない凪咲。そんな彼女に、一瞬、困惑したような表情を浮かべた裕だったが、気を取り直すと
「そう言えば、ご両親やおにいさんはお元気か?」
と尋ねる。その問いに、ようやく顔を裕の方に向けた凪咲が
「父がちょっと前に体調崩したんだけど、今はもうすっかり元気になって、店にも出てる。」
と答えると
「そうか、ならよかった・・・。」
ホッとしたような声を出した裕は、そのまま少し黙って、ハンドルを握っていたが
「凪咲。」
と、今度は少し躊躇いがちに呼びかけた。
「うん?」
「みなさんも怒ってただろうな?俺が急に姿を消して。」
「まぁね。でも、私たちは最初からそういう約束だったんだから。」
そう答えて、また窓の外に視線を向けた凪咲。
(凪咲・・・。)
ハンドルを握ったまま、チラッと彼女に視線を送った裕だったが、それ以上、言うべき言葉が見つからずに、沈黙が車内を包んだまま、車はやがて高層マンションの前を通ると、そのままその駐車場に入って行く。
「着いたよ。」
「はい。」
裕の言葉に頷いた凪咲が、静かにドアを開いて、車から降り立つ。
「着いて来てくれ。」
続いて降り立った裕はそう言うと、凪咲の左手を取った。ハッとして彼を見た凪咲は、その手を振りほどこうとはしなかったが、決して握り返してくることもなかった。そして言葉もないまま、ふたりはエレベ-タ-へと乗り込んだ。
「乗ってくれ。」
と裕が言うと、一瞬彼の顔を見たあと、無言で凪咲は助手席に乗り込んだ。続いて、運転席に裕が身体を滑り込ませ、エンジンをスタ-トさせると、車はすぐに地下から、既に夜の帳の降りた街中へと走り出して行く。
「初めてだな、こうやってふたりで車に乗るの。」
「・・・。」
「凪咲と車に乗ったのは、初めてお前の実家を訪ねた時に、おにいさんの運転で、駅との間を往復した、あの時だけだもんな。」
裕が話し掛けても、窓の外に視線を向けたまま、返事もしない凪咲。そんな彼女に、一瞬、困惑したような表情を浮かべた裕だったが、気を取り直すと
「そう言えば、ご両親やおにいさんはお元気か?」
と尋ねる。その問いに、ようやく顔を裕の方に向けた凪咲が
「父がちょっと前に体調崩したんだけど、今はもうすっかり元気になって、店にも出てる。」
と答えると
「そうか、ならよかった・・・。」
ホッとしたような声を出した裕は、そのまま少し黙って、ハンドルを握っていたが
「凪咲。」
と、今度は少し躊躇いがちに呼びかけた。
「うん?」
「みなさんも怒ってただろうな?俺が急に姿を消して。」
「まぁね。でも、私たちは最初からそういう約束だったんだから。」
そう答えて、また窓の外に視線を向けた凪咲。
(凪咲・・・。)
ハンドルを握ったまま、チラッと彼女に視線を送った裕だったが、それ以上、言うべき言葉が見つからずに、沈黙が車内を包んだまま、車はやがて高層マンションの前を通ると、そのままその駐車場に入って行く。
「着いたよ。」
「はい。」
裕の言葉に頷いた凪咲が、静かにドアを開いて、車から降り立つ。
「着いて来てくれ。」
続いて降り立った裕はそう言うと、凪咲の左手を取った。ハッとして彼を見た凪咲は、その手を振りほどこうとはしなかったが、決して握り返してくることもなかった。そして言葉もないまま、ふたりはエレベ-タ-へと乗り込んだ。