ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「続いて、お料理をお持ちします。」


「あの、手伝おうか?」


「お客様は、席にてお待ちいただければ。」


「でも・・・。」


「では。」


申し訳なさそうな凪咲に、笑顔を向けると、裕はまたキッチンに戻り、両手に皿を持って現れた。


「前菜の『ブロッコリ-とツナのサラダ』と魚料理の『鮭ときのこのコンソメチ-ズ焼き』をお持ちしました。魚料理は、お相手と取り分けて、お召し上がり下さい。」


「美味しそう・・・。」


「どうぞ、お召し上がり下さい。」


改めて、裕は言うが


「ううん、待ってます。」


凪咲は首を振る。頷いた裕は、キッチンに戻り、また両手で料理を運んで来る。


「メインの肉料理『ビーフシチュ-』に主食の『ベーコンとキャベツのペペロンチ-ノ』です。」


「これ全部、裕が作ってくれたの?」


「オフコ-ス。」


「ごめんなさい、お手間掛けさせちゃったね。」


「いや、久しぶりに凪咲に食べてもらえると思って、作ってたから楽しかった。」


「裕・・・。」


「だから、冷めないうちに食べてくれ。」


「ううん、一緒に食べ始めようよ。私、やっぱり運ぶの手伝うから。」


そう言うと凪咲は立ち上がる。ふたりで裕の分のセッティングを済ますと改めて、相向かいで席に着いた。


「今日はご招待いただきましてありがとうございます。いただきます。」


「どうぞ。」


そして、ディナ-がスタ-トした。


まずは前菜のサラダ、続いて魚料理に手を付けた凪咲は


「おいしい。」


そう言って、思わず顔をほころばせる。


「なら、よかった。」


その凪咲の表情を見て、裕もホッとしたように笑顔を浮かべた。その後、パスタ、更にメインのビーフシチュ-と食べ進めて行った凪咲が


「何もかもがおいしい・・・。」


と感に堪えないように言うから


「凪咲の胃袋は掴んでる自信あったからな。」


裕はニヤリ。


「腕、ますます上げたよね。」


「そうか?正直言って、最近は料理してなかったんだけどな。」


「そうなの?特に、このビーフシチュ-は絶品。本当にお店で出せるレベルだよ。裕はシェフになっても、絶対に成功したね。」


「そこまで褒められると、照れちまうけど、でも俺は料理人にはなれないな。」


「どうして?」


「俺は料理は好きだけど、誰かに料理を振舞いたいとはあんまり思わない。そう思えるのは、婆ちゃんと凪咲くらいだな。」


「えっ・・・。」


さりげなく、そんなことを言うと、裕はナイフとフォ-クを動かし始める。そんな彼を、凪咲は思わず見つめていた。
< 152 / 178 >

この作品をシェア

pagetop