ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
その後は、あたりさわりのない会話を交わしながら、食事を進めたふたり。


「さすがにデザ-トまでは作る時間がなかったから、ケーキ買っておいた。絶対に凪咲は気に入ると思うから。」


と言って、裕が出して来たチョコレ-トケーキをコーヒ-と共に堪能して、ディナ-は終了。


「裕、改めて、本当においしかったです。ご馳走様でした。」


頭を下げた凪咲に


「お粗末様でした。実を言うと、今日は最初はトンカツにしようかと思ったんだ。凪咲に初めて振舞った思い出の夕食メニュ-だからな。でも今日のこの雰囲気には、ちょっと合わないかと思って・・・それはまた今度にするよ。」


裕は言う。


(今度・・・。)


また意味深なことを言われて、ハッとしてしまった凪咲は


「片付けは私、やらせてもらうね。ちょっとキッチン、お借りします。」


雰囲気を変えようと立ち上がるが


「そんなのいいよ。」


と制止した裕は


「それより、話があるんだ。」


そう言って、凪咲を見た。


「裕・・・。」


「せっかくだから、ベランダで話そう。」


そう言って、凪咲を誘って、裕は立ち上がる。それを見た凪咲も立ち上がると、彼に続いて、ベランダに出た。これまでガラス越しだった景色が、鮮やかに目に飛び込んで来て、秋の心地よい空気がふたりを包んだ。


並んで、前方を見つめているふたり。だが、その間には微妙な距離があった。どのくらいたっただろう。


「凪咲。」


裕が呼び掛けた。


「今日は無理に付き合わせて、悪かったな。」


「ううん。こんな素敵な景色を堪能させてもらって、あんなおいしいお食事をいただいて、文句なんか言ったら、バチが当たる。本当にありがとうございます。」


「本当にそう思ってくれてるのか?」


「思ってるよ。」


「なら、よかった・・・。」


そしてまた、ふたりは前を向いた。しばしの沈黙・・・それを破ったのは、また裕の方だった。


「確かに素晴らしい眺めだ。でも、最初の内だけだよ、感動してたのは。やっぱり慣れてくるし、最近じゃひとりで見てても、虚しさすら感じるようになってた。」


「えっ?」


「だが、今は正直、心が躍っている。凪咲が・・・横に居てくれてるから。」


「裕・・・。」


その言葉に、思わず彼を見た凪咲に


「凪咲、今夜はこのまま泊まってけよ・・・いや、ここで、また一緒に暮らさないか?」


裕はそう言って、彼女を見た。その言葉に、一瞬茫然とした凪咲だったが


「急に何、言い出してるのよ?こんな時に変な冗談、言わないでよ。」


と窘めるように言うと


「冗談なんかじゃない!」


裕の鋭い声が返って来る。


「なんで冗談だって思うんだよ。」


「だって・・・。」


「3年前のことは申し訳なかったと思ってる。あの時、凪咲が俺に伝えようとしてくれていた気持ちに、気が付いてないわけじゃなかった。俺だって・・・同じ気持ちだったんだから。」


その言葉に、凪咲はハッと裕の顔を見る。


「だけど・・・あの時の俺は・・・その凪咲の想いを受け入れるわけにはいかなかった、そして自分の気持ちにも蓋をするしかなかった。ああするしか・・・なかったんだ。」


「裕・・・。」
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