ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「ちょっと、止めて!」


抗う凪咲に構わずにそのまま、彼女の細い身体を抱き寄せ、スッポリと腕の中に収めた。


「嫌な思いをさせたのはごめん。これからは気を付けるよ。」


「・・・。」


「だけどな、凪咲。チャラチャラしてた時に、いろいろ噂が流れてたのは知ってるけど、天地神明に誓って、誰一人指一本・・・いや、ボディタッチくらいはあったのは認めるけど、それ以上のことは絶対に何もないからな。」


「・・・。」


「それに少なくても、偽装同居後半の3ヵ月以降、今日に到るまで、俺には凪咲しかいないから。お前と再会出来る見込みなんか0だった、海外での3年間でもだ。」


「本当?」


「本当だよ。だいたい付き合い始めてからは、ほとんど一緒にいるんだから、悪さなんて、企むことさえ、出来る訳ないだろ。」


そう言うと、腕の中の凪咲の身体から、力がスッと抜けたが感じられた。


「ごめんなさい。」


「凪咲。」


「他の子はまだ我慢出来た。でも桜内さんみたいに自分と近しい人だと我慢出来なくて、つい・・・ごめんなさい。」


興奮が収まり、凪咲が後悔しているのが、ありありと伝わって来て、一瞬ニヤケてしまった裕は


「可愛い。」


と思わず口にしてしまう。


「そんなに嫉妬してくれるほど、俺のこと好きなんだな。」


「うん・・・。」


意地も張らず、素直に頷く凪咲に


「さっきの桜内も確かに可愛かったけど、俺の彼女の足元にも及ばない。アイツの百万倍、凪咲の方が可愛い。」


と言って、その腕の力を強くする。


「もう、どこにも行かないで。私だけを見ていて、お願い。」


そう言って、腕の中で自分を見上げて来た恋人に


「当たり前だ。もう絶対にどこにも行かないし、お前を離さない。」


と言うと、そのままその可憐な唇を奪って行く。もちろん、なんの抵抗もなく、それを受け入れた凪咲は、愛しい恋人と激しく舌を絡ませ合う。やがて、その情熱的なキスが終わり、再び見つめ合ったふたり。


「行くぞ。」


「うん。」


小さく頷いた凪咲から一旦、身体を離した裕は、そのまま、彼女を抱き上げる。


見つめ合うふたりの頭の中からは、夕飯のことなんか、もう綺麗に吹っ飛んでしまっていた・・・。
< 167 / 178 >

この作品をシェア

pagetop