ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
エピロ-グ①~ご挨拶~
その日、夕食を終えた凪咲と裕は、ソファで寄り添いながら、窓いっぱいに広がる夜景を見つめていた。


「きれいだね・・・。」


「ああ。」


「こんな素敵な景色を、裕とこうして一緒に見られるなんて・・・幸せ。」


そう言って、凪咲は甘えるように、裕の肩に頭を預ける。そんな彼女の肩を抱き寄せると、裕は


「なぁ、凪咲。」


と、呼び掛けた。


「なに?」


自分を見た凪咲に


「凪咲は俺たちのこと、ご両親に報告したのか?」


裕が尋ねる。


「ううん、まだ。」


「そっか・・・。」


裕の表情が曇った。


「どうしたの?」


「俺との同居が、本当は偽装だったってことは、ご両親に伝えたの?」


裕の問いに、首を振る凪咲。


「そうだよな。それを言っちゃったら、元も子もなくなるもんな。」


「うん。」


「だとしたら、俺たちは、お前のご両親を騙したままってことになる。」


「えっ?」


「俺はとにかく、お前と再会してから、お前を口説くのに必死だったし、同棲して、付き合い始めてからは、とにかく毎日浮かれっぱなしでさ。恥ずかしながら、そのことに頭が全く回っていなかった。でも、許されねぇよな、そんなの。」


「裕・・・。」


「だって、俺たちの関係の出発点は、凪咲の実家を訪ねた帰りに、偽装恋人になって、偽装同居をしようと決めたあの時なんだから。そうである以上、俺たちの関係は凪咲のご両親に全ての真実をお話しして、ご理解いただく前に、自分たちの思いだけで勝手に深化させちゃいけなかったんだ。違うか?」


そう言って、裕は凪咲を見る。


「そう、だね。」


裕の勢いに圧されたように、凪咲が頷くと


「よし。じゃ、今度の週末に、お前の実家に行こう。」


「えっ?」


「全てをお話しして、謝って、その上で改めて俺たちが付き合い始めたことを報告して、お許しをいただかないと。」


裕は勢い込む。が


「ちょっと待って。」


凪咲が押し止めるように言う。


「裕の言うことはもっともだし、だから私も取り敢えず、あなたと付き合い始めて、同棲してるってことだけは報告しようと、実家に1回電話したんだよ。でもさ・・・ウチの実家、今ちょっと取り込み中でさ。」


「取り込み中?なんだよ、それ。まさか、おとうさんの身体の具合がまたよくないとか?」


心配する裕に


「そうじゃないんだけど、とにかくちょっとタイミングが悪すぎるんだよね・・・。」


奥歯に物が挟まったように、凪咲は答えた。
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