ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
住宅建築部門や海外取引部門を抱えるAOYAMA本社ビルは、かつては土日もなく24時間体制でオープンしていたが、週休2日制の定着や働き方改革の流れ、更には例の感染症騒動の影響もあり、今では土日祝日は保安会社の警備員は、常駐しているのものの、基本的にはクロ-ズとなった。


それに伴い、受付嬢の勤務もそれまで交代で出ていた土曜出勤が廃止され、休日は週末2日に固定となった。そして4名体制だったブースの定員は1名削減となって、現在に至っている。


今日は金曜日。時期にもよるが、1週間の中で見ると、週あたまの月曜と週終わりに金曜に来客が多い傾向がある。


「今日は既に来場アポも多く入ってます。昨日のようなことがないよう、気を引き締めてお願いします。」


「はい。」


厳しい口調で、朝礼を締めた貴恵の言葉に、凪咲はもちろん、千晶も神妙な表情で頷いて始まった1日は、多忙ではあったが、昨日のようなトラブルはなく、順調に過ぎて行く。この日は15時を過ぎると、来客の数はめっきりと減り


「金曜日にしては、引けが早いですね。」


「そうね。」


などと言い合っていると、内線電話が鳴り、凪咲が受話器を手に取る。


「はい、1F受付ブ-ス、菱見です。・・・はい、少々お待ち下さい。チ-フ、秘書課長からお電話です。」


「そう。はい、お電話替わりました。」


凪咲から受話器を受け取った貴恵は、二言三言話していたが


「かしこまりました、すぐに伺います。」


最後にそう答えて、受話器を置いた。そして


「課長がお呼びなんで、ちょっと行って来るから、よろしく。混んだら、すぐに連絡ちょうだいね。」


そう言い残して、ブースを離れて行く。そんな彼女を見送りながら


「さすがにもう今日は大丈夫ですよね。本当に心配性なんだから。」


などと言い出した千晶に少し呆れながら、凪咲は日報作成に入り、しばらくキーボードを叩いていると


「菱見さん。」


と凪咲を呼ぶ声がする、早川だ。


「桜内、いないの?」


「ええ、今秘書課長に呼ばれて、席を外してます。」


「じゃ、ちょうどいい。少し、いいかな?」


「なんでしょう?」


「新垣から聞いたんだけど・・・」


切り出して来たのは、例の合コンの件だった。
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