ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「都会の煌びやかな夜景には敵わないが、でもいい眺めだな。まぁ凪咲と一緒に見れば、どんな景色でも綺麗に見えるんだが。」


「・・・。」


「ありがとうな。」


「えっ?」


「俺のこと、信じてくれたんだな。」


その裕の言葉に、凪咲はハッと横の恋人の顔を見る。


「昼間、充希さんが言っていた話。その時の帰省って、まだ俺たちが同棲を始める前のことだよな。だとしたら・・・。」


「正直、『俺たちの半年を無にするのか』って言う裕の言葉、結構堪えたんだよね。」


「・・・。」


「それに、『本当の新城さんを知らないまま、理解しないまま、離れてしまってもいいの?』『故郷に帰って、その同級生とお付き合いして、やがて結ばれる。その未来を、あなたが本当に望んでいるのなら、私は何も言わない。でも、申し訳ないけど、私にはそうは見えないんだよ』って、三嶋さんにも言われて。それでずっと考えてたんだよ。そして、あなたの秘書になるって、決心してやっとわかったんだ。自分の本心が。だから・・・結末はどうなるか、当然その時はわからなかったけど、あなたにもう1度向き合ってみようって、思ったの。」


「凪咲・・・。」


「信じて正解だった。裕、私の方こそ、本当にありがとう。」


そう言って微笑んだ凪咲は、裕がドキリとするくらいに美しく、思わずその身体を抱き寄せようとした、その時だった。


ピンポ~ン、無粋な音が、部屋に鳴り響き、一瞬表情を歪めた裕だったが、すぐに気を取り直して立ち上がると、ドアの方に向かった。そして、扉を開くと


「お待たせいたしました。ご注文のルームサ-ビスをお持ちしました。」


これまたにこやかな表情を浮かべたボーイが立っている。


「ご苦労様、どうぞ。」


「失礼いたします。」


招き入れられた彼は、手際よく、運んで来た料理をテーブルをセットすると


「それでは、ごゆっくり。」


そう言って、折り目正しく一礼すると、去って行った。


「裕、これは・・・。」


目の前に並ぶ、豪華な料理に、目を白黒させている凪咲に


「記念日だからな。」


裕は笑う。


「だから、記念日って・・・?」


「本当にわからないのか?」


「ごめん。」


「今日できっかり半年なんだよ。誰かさんが『3年前に、あなたが私の為にくれたのと同じ時間を、今度は私が差し上げます』って、俺に言ってから。」


そう言って、裕は凪咲を見た。
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