ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「そうなんだ。」


「そうなんだって・・・お前、本当に気が付いてなかったのかよ?」


「悪いけど全然。確かにそんなこと、もったいつけて言っちゃったけど、自分でもビックリするくらい、あっさりあなたに陥落しちゃったから・・・正直、もう気にもしてなかった。」


少しバツ悪そうに、凪咲が言う。


「なんだよ、こっちは今日に間に合わせようと必死だったのに・・・。」


「えっ、なに?」


「なんでもねぇ。じゃ、とにかく乾杯しようぜ。」


「なんか、ごめんね。」


なんともチグハグな会話を交わしながら、それでも席に着き、食事をスタ-トさせたふたり。一流ホテルのスイ-トルームでいただくルームサービスは、さすがに見た目も華やかで、味も文句のつけようのないおいしさ。


「おいしい。」


思わず、顔を綻ばせる凪咲だが


「でも・・・こんなにしてもらっちゃって・・・なんか申し訳ないよ。」


と言うと


「いいんだよ、今日は記念日なんだから。」


「でも、その記念日、私は忘れちゃってたんだから・・・。」


「そんなの気にしないで、とにかく今は料理を堪能してくれよ。」


裕は笑って答える。


ひとつひとつの料理を、楽しみ、味わって、裕との会話も弾み、凪咲が幸せそうな笑顔を浮かべ、料理がそろそろおしまいに近付いて来た頃、またチャイムの音が部屋に鳴り響いた。


「おっ、デザ-トが来たか。」


「えっ、デザ-トもあるの?」


「一応フルコ-スだからな。」


「今度は私が出るよ。」


「いい、凪咲は座っててくれ。」


そう言って、裕が立ち上がる。そのままドアに向かうと


「デザ-トをお持ちしました。」


「ありがとう。」


そう言って、ボーイを招き入れる。彼が運んで来たワゴンには、デザ-トのケーキと・・・花束が乗っていた。ケーキをセッテングした後、一礼して、ボーイが退出して行き、再びふたりきりになった凪咲と裕。


「裕・・・。」


思わず立ち上がった凪咲に


「108本のバラの花束が本当らしいんだが、旅先なんでな。」


やや照れ臭そうに切り出した裕は、その花束を凪咲に手渡して


「ちなみに12本のバラのメッセ-ジは・・・。」


と言い出したのを


「『私の妻になってください』、だよね・・・。」


と、先んじて言った凪咲の瞳は、既に潤んでいた。
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